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2018年4月26日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 第3は、最近使われるCVIDという言葉の定義だ。この言葉はブッシュ政権(子)時に使用されはじめ、その後はあまり聞かれなくなったが、最近再びメディアを賑わしている。当初は、complete, verifiable and irreversible dismantlement」、「完全かつ検証可能、不可逆的な廃棄」と訳されていた。しかし、最近ではdismantlementに代わって、denuclearization(非核化)という表現が用いられている。

 筆者はこのことを、うかつにも、4月16日の日本記者クラブでの浅羽祐樹・新潟県立大教授の会見をきくまで知らなかった。調べてみると、ことし2月25日の朝鮮半島非核化に関するホワイトハウス報道官声明では、はっきりと「denuclearization」の表現が使われていた。4月18日に行われたトランプ大統領と安倍首相の会談についてのホワイトハウスの声明でも同様な表現がみられ、dismantlementという言葉はなかった。

 ニュアンスの問題だが、廃棄や分解を意味するdismantlementに比べ、denuclearizationからは、単なる非核化という軽い響き、意味合いしか感じられない。使用不能にさえすれば、廃棄は必要ないと解釈できないこともない。

「圧力」継続で完全勝利は可能

こうした状況証拠とは別に、側近の進言やアドバイスに耳を傾けることなく、自ら独裁的に決定を下すといわれるトランプ大統領が、交渉の場の独特な雰囲気の中で、高揚感から不用意な譲歩に走ることは考えられるだろう。大統領が、ホワイトハウスを訪れた韓国特使団から金正恩との首脳会談の話を持ち出された時、その場で即断したことを考えれば、根拠のない懸念とは言えない。

 北朝鮮が首脳会談に応じてきたことについて安倍首相らは、各国が圧力をかけ続けてきたため、金正恩がそれに耐えられなくなったと分析している。おそらく正しい見方だろう。そうであれば、極端な話、首脳会談など行わなくとも、北朝鮮に圧力をかけ続けさえすれば、先方は〝白旗〟を掲げてくるだろう。〝熟柿作戦〟ともいえようが、妥協、譲歩を引き出されるリスクを伴う首脳会談より、時間はかかっても効果的、得策ではないか。

 思い出してほしいのはリビアのケースだ。リビアは、北朝鮮と同様に大量破壊兵器を開発しながら米英の圧力で完全放棄したが、米英との間で、首脳会談や交渉などは一切なかった。両国の情報機関が圧力をかけ続けた結果、当時の最高指導者、カダフィ大佐が2003年12月、突然、廃棄の意向を伝えてきた。その直前、イラクのフセイン大統領が米軍に身柄を拘束されたことに衝撃を受けたのかもしれない。それはともかく、米国は廃棄をリビアに任せることなく、核兵器、関連機器をすべて米国本土に運んで自らの手で廃棄した。

 リビアのケースは、圧力をかけて追い詰めれば、武力によらなくとも、北朝鮮に核を廃棄させることが可能であることを示した。

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