2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月15日

北朝鮮問題

・両首脳は、2018年4月に開催された南北首脳会談を含む、朝鮮半島に関する諸懸念の包括的な解決に向けた、最近の前向きな進展を歓迎した。両首脳は、国際的な協力及び関連する国連安保理決議に基づく義務の完全な遵守の重要性を強調するとともに、地域と世界の平和、安全、安定、協力及び発展のため、関係当事者が朝鮮半島の完全な、検証可能な、かつ不可逆的な非核化を含む課題の平和的・外交的解決 を目指す取組を継続することの緊急性を確認した。両首脳はまた、拉致問題を直ちに解決するための協力を強化することに対するコミットメントを再確認した。 

幅広い分野の防衛協力

両首脳は、両国の防衛大臣により2011年10月に署名された「日本国防衛省 とベトナム社会主義共和国国防省の間の防衛協力及び交流に関する覚書」及び2018年4月に署名された「日本国防衛省とベトナム社会主義共和国国防省の間の次の10年に向けた日越防衛協力に関する共同ビジョン声明」に基づき、防衛分野における協力を強化する意図を共有した。両首脳は、日本国自衛隊の艦船及び航空機のベトナ ム訪問を含む軍種間交流を強化し、人材育成、防衛装備品・技術、航空機による捜索・救難、防衛医学、国連平和維持活動、サイバーセキュリティ、人道支援・災害救援等 の分野における協力を促進することで一致した。
【上記出典:外務省「クアン・ベトナム社会主義共和国国家主席の国賓訪日の際の日ベトナム共同声明 」、2018年5月31日】

 今回のベトナムのクアン主席の国賓としての来日は、昨年の天皇皇后両陛下のベトナムご訪問を受けての返礼でもあり、また日越外交樹立45周年の祝賀の意味合いもあった。

 日本は、自由で開かれ、国際法秩序に基づく海洋を維持するという普遍的価値を米豪英仏等と共有している。そして今、この価値観とヴィジョンを、ベトナムとも共有する。南シナ海で中国と領有権を争っているベトナムであるが、中国は一方的に人工島を建設し、そこを「防衛」という名目で軍事化している。中国を刺激しないように、「中国」という固有名詞こそ上げないが、中国を意識して、日本がベトナムを支援し、ベトナムも日本に感謝していることは、明らかである。

 ベトナムは海洋のみならず、陸でも中国と国境を接している。かつて中越国境紛争もあった。ある時、ベトナムの外交官が話してくれた。山にある中越国境線上に「平和の門」が設置された。中国とベトナムそれぞれの兵士が監視していたが、中国は、毎日、その「平和の門」を少しずつベトナム側に移動させてくる。すなわち、中国は、徐々に徐々に自国の領土を広げてきた。ベトナム側は、負けじと毎日、その「平和の門」を元の位置に戻したと言う。この話を聞いたのは確か1998年頃であり、今より約20年も前である。ベトナム人は辛抱強いのだろう。そして、おそらく、ベトナム戦争で大国の米国を「名誉の撤退」に追いやったように、大国に対しても毅然と戦う粘り強さを持ち合わせているのだろう。

 日本は、そのベトナムを様々な角度から支援している。特に、南シナ海をめぐる海洋安全保障の分野では、すぐに軍事衝突にならないように、海上保安庁の役割が大きくなっている。以前、ベトナムの海上警察はベトナム海軍に入っていたが、それを別組織にして海上保安庁のような組織を創設することは、日本が知見を与えたものである。巡視艇供与はハード面の支援であるが、こういうアイデアを出すというのは、目に見えにくい日本のソフト・パワーであろう。

 今後も、日本の海洋大国としての知見や経験は、インド太平洋地域の中小諸国に、多々役立つことだろう。そうすることで、国際社会が求める「自由で開かれた海洋」が保たれるのだろう。
 

  
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