2024年4月19日(金)

ネット炎上のかけらを拾いに

2018年6月19日

人工機能が人の顔を採点する無邪気さ

 もう1件の炎上は、ITmediaで配信された記事「AIで女性の顔の“魅力”も数値化――東大で研究中の「魅力工学」とは?」
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1806/06/news006.html)。

 記事の中では、東京大学の教授が女性の顔の「魅力度」を予測する人工知能を開発したことや、さらに人工知能が女性の魅力度を最大化するメイクを提案するところまで研究が進んでいることが明かされた。記事全体としてはディープラーニング(深層学習)がどこまで進んでいるのかや、今後の可能性について言及したものだが、冒頭に出した例が顰蹙を買った。

 男性よりも女性のほうが、見た目によるジャッジを受けやすい。芸能人でも政治家でもスポーツ選手でもビジネスパーソンでも一般人でも。仕事や勉強、研究の能力に加えて、女性はさらに「女子力」と言われるメイク力やら何やらで査定をされることがある。そんな「抑圧」を感じる側からすれば、この期に及んでなぜ女性の顔だけが点数化されなければならないのかというところだろう。

 もちろん、メイクを学習したい女性にとっては有意義ともいえる研究だろうし、実際に現在の世の中にある魅力の尺度をAIが点数化するというのは面白いのかもしれない。しかし、無邪気だとは思う。記事は当初、並んで点数付けされた女性の顔の画像がそのまま表示されていたが、その後モザイクがかけられた。

 筆者が気になったのは、記事内の「女性の顔については、古今東西、大体同じ評価尺度が存在することが、心理学の分野で判明している。男性の顔の魅力については、複数の評価尺度があるといわれている」という部分である。

 ときどき、若い女性への揶揄として「みんな同じに見える」と言われることがある。髪形やメイク、ファッションセンスなどが、似たり寄ったりという意味だ。流行に左右されるということもあるだろうが、そもそも好まれる評価尺度の幅が男性よりも狭いのであれば、目指すところが似通ってしまうのも仕方ないのかもしれない。

 個性が大事、ナンバーワンよりオンリーワンと言われて久しいが、本当は個性なんて求められていない。明確に点数化できるほど評価尺度がはっきりしている美の基準がある中で、平均化を目指すのは無理もない。

 海外では、痩せすぎのモデルをショーに登場させることをやめる風潮があるという。レタッチでの修正に抵抗するモデルや女優が増えているという。唯一の美の基準に抗い、行き過ぎた競争レースから降り、「ありのまま」で生きたいと願うこと。これからの人工知能は、そんな葛藤までも捉えてくれたりしないだろうか。
 

  
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