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Washington Files

2018年6月25日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

キッシンジャーの警告

 この点に関してはすでに、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が去る2011年1月、ワシントンポス紙に「米中冷戦を回避するために」と題する論考を寄稿、次のように警告していた。

 「米中間の冷戦は、核拡散、環境、エネルギー、地球温暖化などの諸問題に包括的かつグローバルに取り組まなければならない時に、多くの地域で各国を論争の中に巻きこんでしまうことになりかねない。それだけに両国は互いの国家主義的な野望を自制し、世界秩序確立のために協力し合う必要がある」

 ところが実際には、今世紀に入り、両国とも世界秩序より国益最優先の政策を推進する姿勢が鮮明化してきている。とくに目立つのが、中国の軍事拡張だ。中でも太平洋全域における海軍プレゼンス強化の勢いは止まらない。

 「AsiaTimes」紙によると、それは具体的には、2011年に始まった。この年、中国はアラビア海に面したパキスタンの小さな漁港グワダールを2億5000万ドルを投じて軍事利用可能な近代的な貿易港への改造に着手、そして2015年には習近平国家主席が同港から中国西部にかけての3200キロに及ぶ道路、鉄道、石油パイプラインのための「中国―パキスタン経済回廊」建設構想を明らかにし、そのために460億ドルもの巨費を投じると発表した。

 中国政府はその後、公式には軍事的意図に関しては何も言及してこなかったが、パキスタン海軍が翌2016年になって、グワダール港に軍事施設を設置、すでに中国から寄贈された戦艦2隻も他の艦船とともに配属されていることを明らかにしている。

 同じく2016年、中国は太平洋に面しアフリカ東端のソマリアとエチオピアにまたがる半島「アフリカの角」のジブチに主要海軍施設の建設に着手、アラブ産油国への足がかりを確保すると同時に、インド洋でも中間地点に位置するスリランカとの間で、数10億ドルに達する対中借款帳消しと引き換えに、戦略軍事拠点となるハンバントタ港の割譲を受けることで合意済みという。
 
 こうした中長期的軍事拠点づくりを中心としたいわば“静かな軍拡”と対照的なのが、南シナ海、東シナ海そして西太平洋への展開を視野に入れた中国海軍の力ずくの示威行動だ。

 南シナ海に関しては、2016年7月、中国国務院発表の白書の中で、領有権をめぐりフィリピン、ベトナムなど近隣諸国で係争中のスプラトリー諸島に滑走路や「街」を建設するなど軍事拠点化の動きが活発化している。

 これと並行してとくに空母戦力の強化にも拍車がかかり始めた。


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