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Washington Files

2018年6月25日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

アメリカはどう対峙するのか?

 2012年9月、ウクライナから買い受けた空母の船体を改造した「遼寧」が初就航以来、今度は大連で純粋な国産本格空母の建造を開始、当初、2020年とされた就航も予定より早まる見通しで、近々にも初の試験航行が行われるという。

 これに続いて上海で、より性能の優れた3隻面の通常型空母、そして4隻目の原子力空母建造計画もすでに公表されている。

 空母は実戦配備となった暁には、米軍の場合、通常、駆逐艦、巡洋艦、フリゲート艦からなる複数の護衛艦のほか、攻撃型潜水艦と補給艦合わせ6隻で編成される「空母打撃軍」(略してCSG)として行動する。中国も今後、同様の行動様式を踏襲するとみられ、実際に3隻目、4隻目が登場した場合、その存在は極めて威圧的で大きなものとなる。そして米国防総省関係者の間では、このまま中国海軍の増強が進めば「2030年までに南シナ海全体が“中国の湖”となる」との不吉な予測まで出始めている。

 とくに、中東からの石油に依存する日本にとって、南シナ海から東シナ海にかけてのシーレーン(海上輸送路)の安全確保は今後将来的に死活的に重要となるだけに、中国海軍の動きをとくに注視していく必要があることはいうまでもない。

 ではこうした中国の軍事攻勢に対し、アメリカはどう対峙しようとしているのか。

 実はオバマ前政権発足当初から、米政府内でも対中警戒論が高まり、着々と対応策を講じてきた。

 2014年3月、オバマ大統領自らがオーストラリア国会で米軍戦略の「アジアへの転換」を基調とする重要演説を行い、南シナ海に面する同国ダーウィン基地への米海兵隊1個大隊本格投入を発表、さらにその1か月後には、フィリピンとの間で、同国5カ所の軍事基地への米兵力駐留を認める防衛協力協定の締結にこぎつけている。

 さらに同政権下で、在日米軍施設についてもフィリピン・スービック、豪ダーウィンそしてシンガポール各基地との統合運用体制も確立、南シナ海をにらんだ“同盟の鎖”構築に取り組んできた。

 トランプ政権下では、マティス国防長官が今年6月18日、海軍大学での講演の中で、ロシアの台頭と並んで中国が米国のライバルとなってきたことに触れ「中国は現存する世界秩序の書き変えという長期的野望を抱いている」として、その対応策として①より致命的破壊力のある戦力増強②軍事同盟関係の強化③国防総省の効率の良い組織への改編―の3点を挙げた。

 気がかりなのは、マティス国防長官も力説した日本、韓国、オーストラリアなど同盟諸国との関係強化だ。

 トランプ大統領は就任以来、「アメリカ・ファースト」を前面に打ち出し、NATO(北大西洋条約機構)軽視発言、アジアの新たな同盟の柱になるはずだったTTP(環太平洋経済連携協定)からの離脱、日、豪、韓同盟諸国に対する貿易制裁など、自ら同盟関係に水を差す言動を繰り返してきている。

 このままでは、中国との「第2次冷戦」の前途は多難と言わざるを得ない。

  
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