20世紀後半の世界は「米ソ」冷戦時代だった。そして今世紀に入り、じわじわと「米中」両国の対立がヒート・アップしてきた。「第2次冷戦時代」が近づいてきている。
世界的ベストセラー『文明の衝突』の著者サミュエル・ハンティントン博士(故人)に筆者がインタビューしたのは、今から23年前のことだった。
当時、ハーバード大学政治学部長の要職にあった教授を研究室に訪ね、2時間近くにわたり、現代文明の将来についてじっくり話をうかがったが、その中で、彼が吐露したある衝撃的な“予言”が今も脳裏に鮮明に焼き付いている。
「これまで世界は、米国とソ連という東西2超大国の対立に振り回されてきたが、ソ連崩壊により冷戦時代にピリオドを打った。だが、21世紀には『第2次冷戦時代』がやってくる。それは米国と、新たに台頭してきた中国との対立だ」
奇しくもこの博士の予言通り、21世紀とくにトランプ共和党政権発足以来、米ソに代わって米中関係の様々な面できしみが生じ始めており、世界を巻き込んだ「第2次冷戦時代」到来への警戒感も広がりつつある。
つい最近では今月に入り、世界第1位の米国と第2位の中国との間の「関税戦争」がエスカレートしてきた。
まず、トランプ米大統領は15日、知的財産権の侵害を理由に、制裁措置として米国向け中国製品818品目に対し500億ドル(約5.5兆円)相当の輸入関税を課すと発表した。すると中国は翌16日、対抗措置として米国からの農産品、自動車など659品目に対し計500億ドル相当の輸入関税上乗せを発表した。
これを受けて、トランプ大統領はさらに18日、「中国に不公正な取引を変えさせるためにさらなる措置が必要だ」として、ライトハウザー米通商代表に対し、新たに中国製品に対し2000億ドル(約22兆円)相当の追加課税措置を取るべくその対象品目の検討を指示した。
中国も黙っていない。翌19日ただちに、中国商務省が声明を発表「米国が追加制裁すれば、中国も、量と質を組み合わせた総合的な措置を取り、強く反撃する」と強調した。
両国の応酬がさらにどこまで続くのか、先行き不透明のままだ。
だが、このような米中間のさや当ては、貿易・経済関係にとどまらない。それ以上に懸 念されるのが、政治、軍事そして地政学的な戦略面での相克だ。