2024年12月16日(月)

孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代

2024年9月17日

 既婚男性の読者の皆さん。「今晩、何を食べたい?」と、妻に聞かれたら、「うーん、なんでもいい」と答えていないだろうか? これは、自分が食べたいものが分からないという深刻な状況なのだ。

(YOSUKE WADA)

妻に先立たれた後の生活を
考えたことがありますか?

 子どもの頃には母親の庇護のもとに成長し、結婚したら妻の手料理が出てくるのが当たり前の生活をしている既婚男性はいまだに多いが、目の前に供されたものを食べるだけの生活を続けていると、自分が今日食べたいものを考える必要もないので、思いつかなくなるのも不思議ではない。

 しかし妻に先立たれたら、その後の生活は一変するだろう。そんな人生について、一度でも考えたことはあるだろうか。既婚男性の多くは、なぜか妻より先に逝くと信じているので、そんなことを考えたくもないかもしれない。

 ホスピス財団(大阪市)が既婚者に対して2022年に行った「自分と配偶者のどちらが先に逝きたいか(逝ってほしいか)」という調査結果によれば、20代~70代のどの年代の既婚男性も、「妻より先に死にたい」と回答した人が「自分は妻より後に」という回答を上回っていた。ちなみに、女性では50代より上の年代で、「夫が先に」が多いが、40代より下の世代では、「自分が先に逝きたい」が多くなる。

 シンガー・ソングライターのさだまさしさんが1979年に発表した「関白宣言」には、「子供が育って年をとったら 俺より先に死んではいけない」という歌詞がある。50代以上では、「夫が先で、妻が後」と、男女の意見が一致しているものの、これからの時代は、夫も妻もどちらも先に逝きたいという「逝ったもん勝ち」の社会になる。

 ちなみに2020年の国勢調査では、50歳以上の男性死別者は154.6万人で、男性の5.7%に過ぎないが、75歳以上になると14.7%を占め、7、8人に一人が、妻と死別している計算だ。一方、女性をみると、50歳以上の死別者は739.7万人と男性の5倍弱もおり、全体の23.4%を占める。75歳以上になると50.6%が、夫との死別経験者となる。

 特にこの20年間、男性の寿命の伸長に伴って、妻に先立たれる人の数が増えている。一般的には、夫が先に亡くなる確率が高いが、長生きすれば、妻に先立たれるリスクが高くなる。そもそも結婚すれば、離婚しない限り、事故や事件以外で夫婦が同時に亡くなることは考えにくい。これからは男性も、死別リスクを考えておかねばならない。


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