2024年12月22日(日)

Wedge2024年4月号特集(小さくても生きられる社会をつくる)

2024年3月20日

 小誌記者の地元では、草刈りや川の掃除など、日々、さまざまな活動への参画が求められる。鳥獣害の柵の設置を手伝ったときには「人手が増えた」と感謝されたこともある。

 それらを通じて「顔の見える人間関係」ができる。それでも、ある意味で、濃密すぎる「人間関係」が重荷だったりもする。折しも、元日に能登半島地震が起きた。不明者を探したり、助け合いながら避難したり、やっぱり地域の中での人間関係が大事だと再確認させられた。でも、都会に住んでいると、どうやってその人間関係をつくればいいのか、よく分からない……。

 そんなとき、記者はふと、ある人のことを思い出した。

小谷みどり Midori Kotani 奈良女子大大学院修了。第一生命経済研究所主席研究員を経て、シニア生活文化研究所を開設。著書に『没イチ パートナーを亡くしてからの生き方』(新潮社)など多数。

 シニア生活文化研究所の小谷みどりさんだ。小谷さんは第一生命経済研究所で長年「死生学」を専門にして、葬送や墓の問題を研究してきた。 かつて看取りの特集取材で出会った時、東京都心に住む小谷さんから「私、消防団員になりました」という話を聞いたことがよみがえった。

 消防団は、住民が担い手となって地域の消防防災に取り組む役割がある。だが、近年ではなり手不足や高齢化といった問題に直面している。

 「コロナ禍になって家に閉じこもることが多くなり、近所のゴミ拾いを始めました。すると、『おはようございます』『今日もありがとうございます』など、いろいろな人が話しかけてくれるんです。そんなちょっとしたコミュニケーションの中で、『消防団に入りませんか?』と誘われたのがきっかけでした」

 小谷さんが所属する消防団には、約20人の団員がいる。40代後半~50代が多く、そのうち3分の1が女性で、団長は70代。消防団に所属しなければ出会わない人ばかりだ。

 「いろいろな人と出会い、救命救急の資格を取得したり、新しい体験ができるのは楽しいです。ただ、1回の訓練に2~3時間とられ、小中学校や商業施設での消防訓練などにも参加することが多くなるので、家族の理解を得る必要があります。

 私は、2022年12月に入団して、2回ほど火災現場に出動しました。交通整理など簡単なものもありますが、消火ホースの巻き取りなど、腰が痛くなるような作業もあります」


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