2024年11月22日(金)

Wedge2024年4月号特集(小さくても生きられる社会をつくる)

2024年3月20日

ライトでもいい関係

 それでも小谷さんの表情は明るい。昨年4月からは近所の小学校の支援員にもなった。

(Jacob Wackerhausen/gettyimages)

 「町を歩いていると、1年生の子どもたちが『あ、先生!』と手を振ってくれるようになりました。地域で子どもを見守るといったことができるようになったと思います」

 まさに、顔の見える人間関係だ。ただ、小谷さんは「緩い人間関係」で構わないという。

 「ゴミ拾いをしているときに、おばあちゃんが粗大ゴミを出すのが大変そうだったので、手伝ってあげたんです。すると、『実は最近、乳がんの手術をしたばっかりで運ぶのが大変だったの。でも、近所の人には頼みづらくて……』と、話してくれました。近しい人には話しづらいということもあります。一緒にゴミ拾いをする人の中に、名前は知らないけど、よく話をする人がいて、仕事の悩み事を相談されることがあります。

 近所の集合住宅で『孤独死』が起きたときに、高齢者の人たちが『明日はわが身』と話していました。だからこそ、ディープでなくても、『あの人、どうしているんだろう?』と思われるくらい、ライトな人間関係をつくっておくと良いと思います」

 小さくてもいい。地域づくりの第一歩は、身近な所で、勇気をもって踏み出すことが大切なのだろう。

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Wedge 2024年4月号より
小さくても生きられる 社会をつくる
小さくても生きられる 社会をつくる

全都道府県で人口が減少――。昨年7月の総務省による発表に衝撃が走った。特に地方においては、さらなる人口減少・高齢化は避けられない。高度経済成長期から半世紀。人口減少や財政難、激甚化する災害などに直面する令和において、さまざまな分野の「昭和型」システムを維持し続けることはもはや限界である。では、「令和型」にふさわしいあり方とは何か――。そのヒントを探るべく、小誌取材班は岩手、神奈川、岐阜、三重、滋賀、島根、熊本の7県を訪ね、先駆者たちの取り組みを取材し、「小さくても生きられる社会」を実現するにはどのようなことが必要なのかを探った。


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