国立社会保障・人口問題研究所の『生活と支え合いに関する調査』(2022年)によると、一人暮らしの65歳以上男性のうち、会話頻度が電話も含め、「2週間に1回以下」の人は15.0%にものぼる。6、7人に一人の単身高齢男性は、ほぼ2週間誰とも挨拶すら交わさない生活をしているというのだから、驚きだ。単身高齢女性では、会話頻度が「2週間に1回以下」は5.1%なので、社会から孤立している単身高齢男性がいかに多いかが分かる。
誰とも会話しないと、だんだん無気力無関心になり、家事をするのもおっくうになり、セルフネグレクト(自己放任)になりかねない。そのうえ、認知症リスクも高まるという。「妻だけが頼り」という生活は、ひとり暮らしになった後が危険だ。元気なうちから、趣味や地域活動など、仕事以外の人間関係を作っておくことが大切だ。
パートナーの分も
人生を2倍楽しむ
私は、死生学の講座を持つ立教セカンドステージ大学の受講生のうち、配偶者と死別した人たちで「没イチの会」を結成し、「パートナーの分も人生を2倍楽しむ」ことをモットーにしている。40代、50代で死別したメンバーも少なくない。
我々の掲げるモットーを「不謹慎だ」とする意見があることも承知している。配偶者がいる同級生や近所の人たちに「かわいそうね」「さびしいでしょ」という言葉を何年たってもかけられ、傷ついた人もいる。人生を共にした人との死別は誰だって悲しい。
だが、残された人はパートナーのいない環境に順応し、その後の人生を生きていかねばならない。同じ体験を持つ人たちだからこそわかり合え、話題にできることもある。仲間とのたわいもない会話やメンバーで企画したイベントに参加することを通じて、生きる喜びを見出した人を筆者はこれまでに何人も見てきた。
16年に第一生命経済研究所で、配偶者と死別経験のある高齢者を対象に筆者が実施した調査では、「特定のパートナーや異性の友人を欲しいと思わない」と回答した人は、女性で55・0%もいたが、男性では 28.2%にとどまり、異性との交流を望む人は圧倒的に男性に多い。昨今、シニアの婚活市場は活況だが、お見合いパーティーの場に、年金手帳や通帳で経済力をアピールし、「相手は家庭的で健康的な方がいい」と、女性に家政婦像を求める男性の姿が目立つ。
以前に外国人記者たちを前に、シニア婚活について講演したことがあるが、「そもそも、好きな人、一緒にいたい人がいるから結婚するのではないか?」と質問されたことがある。「結婚するために相手を探す」というのは、欧米の人からすれば奇妙に感じるのかもしれないが、自分の世話をしてくれる女性を欲しているという時点で、自立できていないことの表れなのかもしれない。
近所付き合い、地域活動、公民館の講座などに参加する勇気を持てば、そこには、新たな出会いも待っているはずだ。