2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2011年5月2日

相互応援をシステム化し、
リアリティある防災訓練を

 災害というものは、常に発生するわけではありません。災害対応の実際や意識向上を、どのように行えばよいのでしょうか。私が提案するのは自治体同士の相互応援をシステム化することです。好例は消防庁の緊急消防応援隊。東日本大震災では、被災地に1,000隊以上が入りました。

 被災時には、その自治体が抱えている職員の数倍の人数が必要になります。罹災証明に結びつく建物被災度判定や、避難所の設置・運営など、災害時に特有の業務が発生します。その補強を、他の自治体からの人的支援でまかなえば、自治体機能を早く回復できる上、手伝う側の自治体職員にとっては、OJTを行えることになります。そこで出てくる課題は、やはり事前の研修と訓練、そして災害対応業務の全国的な標準化です。全国市長会などが音頭を取って、システム化していくことが大切でしょう。住民の命を預かる首長が率先して、相互応援のシステム化を積極的に進めていくべきです。

 東日本大震災を機に、自治体防災をあるべき方向へ振り向ける努力が必要ではないでしょうか。

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吉井博明
1971年東京工業大学大学院理工学研究科博士課程単位取得満期退学。1972~1980年(財)未来工学研究所研究員/主任研究員。1981‐1998年文教大学情報学部助教授/教授。1999~現在、東京経済大学コミュニケーション学部教授。専攻は情報社会論、災害情報論。


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