2023年2月8日(水)

Wedge REPORT

2018年7月13日

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キャンセル発生

 08年に全日空が航空会社の先頭を切ってMRJ25機(うち10機がオプション)の受注を決めた。当初の予定では15年には1号機が納入される予定だったが、20年半ばまでずれこむとしている。09年には米国のトランス・ステーツ・ホールディングスから100機(50機はオプション)、12年には米国の地域航空会社スカイウエストから100機受注、その後追加で100機オプションの注文を獲得、また日本航空から14年に32機を受注した。

 日本航空は子会社のジェイエアにMRJを導入する計画で21年ころから就航させ、現在使っているカナダのボンバルディア製とブラジルのエンブラエル製の機体を順次MRJに切り替えたいとしている。こうした懸命の受注努力により、新型航空機の採算分岐点と言われる受注機数が合計400機をやっと超えるところまでになった。ところが、今年2月に米イースタンから受注していた40機がキャンセルになった。イースタン航空が経営悪化により米スイフト社に事業譲渡したため、この受注はご破算になった。この結果、現在の受注機数は387機になっている。

 今後、重要になるのが米国の2社から受けている合計300機の受注の行方がどうなるかだ。この受注は予備受注のため確定はしておらず、両社ともローカルの航空会社だ。しかも、ブラジルの有力メーカー、エンブラエルとの両にらみの注文を出しているという。仮にこの受注がエンブラエルに持っていかれたりすると、MRJにとって受注生産機数が大幅に減少し将来の採算が見込めなくなり大きな痛手となりかねない。

ボーイング、エアバスと真正面競争

 世界の民間航空機市場は経産省などの予測によると、年率5%で成長する旅客需要の伸びを背景に、今後20年間に3万機、約4兆㌦の市場が期待されている。中でも伸びが大きいのがアジア市場で、LCC(格安航空)の急成長により、150人乗りの中型機の需要が最も多いとみられている。これに伴いMRJが狙っている小型機の需要も増えると見られており、同型機の生産で実績のあるエンブラエル、ボンバルディアなどとの競争が激化するとみられていた。

 ところが7月に入って予想外の展開が起きた。ボーイングがエンブラエルの小型旅客機事業を買収すると発表、エアバスもボンバルディアが開発した小型機事業をエアバスグループに吸収することが明らかになり、エンブラエルとボンバルディアがボーイングとエアバスという世界の2大メーカーの傘下に入ることになった。ボーイングはエンブラエルが開発してきた70~130席級の旅客機「Eジェット」の新会社に8割を出資するとしており、ボーイングは大型機から中型機までのラインナップを揃えられることになる。

 そうなると「新参者」のMRJはボーイング、エアバスという巨大メーカーと真正面から競争しなければならなくなり、ボーイング、エアバスとの間で受注実績のある世界の航空会社に割って入って注文を取るのは不利にならざるを得ない。

 難しいのはMRJの親会社の三菱重工業がB787などボーイングの旅客機の主翼などの生産を担っていることで、ライバル機の生産を手伝いながらMRJの支援を続けるという複雑な関係になる。三菱重工業は「ボーイングとは関係なくMRJを支援し行く方針に変わりない」としているが、MRJにとって取り巻く環境が難しくなる一方で。その中で16日から始まる「ファンボロー航空ショー」で初飛行を成功させ、将来に向けて光明を見いだすことができるかどうか、関係者は文字通り固唾を飲んで見守っている。


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