取り巻く環境厳しい
三菱航空機は16年3月に、愛知県営名古屋空港(同県豊山町)の隣接地に建設した機体の最終組み立て工場を報道陣に公開、工場は高さ約13㍍、延べ約4万4000平方㍍の広さで、MRJ90(長さ約36㍍、幅約29㍍)が同時に12機分入る広さがあり、16年秋にも最初の顧客となる全日本空輸向けに生産を始める予定だと説明していた。この工場が予定通り稼働すれば問題はないが、MRJを取り巻く経営環境はより厳しさが増している。
日本の航空機産業にとってMRJは期待の大きい存在になっていた。これまで日本の民間航空機産業はボーイング社のいわば下請けとしてB767、B777、B787などの機体の一部を1980年代以降、三菱重工業、川崎重工業、SUBARUなどが請け負ってき。しかし、MRJは国産初のジェット旅客機で、エンジンは外国製だが、日本で設計した飛行機のため、航空業界への技術的な波及効果も大きいとみられていた。MRJが順調に生産されると、日本の航空機産業はB787などの生産と合わせて20年には年間2兆円規模になるとの試算もある。しかし、こうした試算はMRJの商業生産が軌道に乗ればの話で、「離陸」できなければすべて皮算用でしかなくなる。
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