Q3 なぜトランプ大統領は中国からの自動車に高関税を課すのか?
A3 トランプ大統領は中国からの輸入車のみならず、欧州車及び日本車にも高関税を課すのではないかという懸念が広がっています。その背景には、中西部ミシガン州の自動車産業を保護する意図があると言いたいところですが、トランプ氏の狙いはどちらかと言えば、中間選挙でインディアナ州の自動車産業に携わる労働者の支持を固めることです。同州には自動車メーカー及び同部品メーカーが進出しています。
今回の中間選挙における上院選で、トランプ大統領は中西部ノースダコタ州、インディアナ州及び南部ウエストバージニア州の3州の与党共和党候補が民主党の現職議員を破る機会であると判断し、彼らを激しく攻撃しています。16年米大統領選挙においてトランプ氏はライバルのヒラリー・クリントン元国務長官をインディアナ州で、19.3ポイントの大差をつけて勝利を収めています。
Q4 関税ゲームはいつまで続くのか?
A4 中国は報復の対象品目に米国産の大豆を入れました。トランプ大統領の地盤である中西部アイオワ州の大豆農家を標的にして揺さぶりをかけたことは明らかです。
関税ゲームの区切りは、11月6日の中間選挙です。中国による関税報復の効果が選挙の前までに出て、トランプ支持者が「生活が圧迫されている」という実感を持つか否かがポイントになります。仮に実感を持てば、トランプ氏は米中首脳会談を開き、プレイ中の追加関税ゲームを休止するか、あるいは終止符を打つかの選択を行う可能性が高くなります。
Q5 トランプ大統領は最終的に何を求めているのか?
A5 率直に言えば、中国に対する「勝利宣言」です。トランプ大統領は、米中貿易戦争に勝利を収め、「公平で互恵的」な貿易を中国から勝ち取ったと有権者に宣言をしたいのでしょう。理想的には中間選挙の直前に、勝利宣言をしたいところです。
トランプ大統領の対中ゲーム戦略
過去にトランプ大統領は、「貿易戦争は良いことだ。勝つのは容易い」と発言をしたことがあります。しかし、現段階ではトランプ氏のゲーム戦略は中国には効果的ではないようです。中国は、米国産の大豆を標的にしました。その理由は明確です。米国にとって中国は最大の大豆の輸出先だからです。しかも、前述しましたが、中西部はトランプ大統領の地盤です。
アイオワ州大豆協会によれば、米中貿易戦争のエスカレートは、同州の4200戸の大豆農家を直撃します。パデュー大学(中西部インディア州)の研究では、中国が米国産大豆にかけた25%の関税によって、米国から中国への大豆輸出が65%減少します。すでに、大豆の価格が下がっており、大豆農家には大きな懸念材料になっています。
習国家主席のトランプ大統領に対する優位性は、アイオワ州の大豆農家にとって中国がお客様であるという点です。習主席はトランプ氏のゲーム戦略である「レバレッジ(てこの力)」を活用しています。「てこの力」では「相手に対する優位性」を利用して、自分の望むものを得ます。習氏は、大豆農家を「てこの支点」にして、「報復関税の棒」を使って自国のハイテク製品にかけられた25%の関税を撤廃しようとしています(図表)。
対中貿易不均衡是正を目的にトランプ大統領がかけた関税の「脅しと圧力」は中国には通用しないうえに、「私のトモダチ」作戦も習主席に対してまったく機能していません。
逆に、中国政府は中国を自由貿易のルールを尊重し、多国間の貿易体制を守る「善人」に描いています。その一方で、米国に保護貿易主義と貿易覇権主義のレッテルを貼って、「悪人」のイメージを作っています。そうすることによって、中国はトランプ氏の「不公平と互恵的」のゲーム戦略の効果を弱めて、「自由貿易対保護貿易」に争点をすり替えているのです。