タワマンブームに陰り
マンション価格がなかなか下がらない理由として、2008年に起きたリーマンショック後になると、中堅のマンション開発業者が減少、大手のシェアが半分近くになり、事実上、大手の寡占状態になっていることが挙げられる。しかも、大手はビル、ホテルなどが絶好調のため、マンションを無理して販売する必要性が薄れている。
このため、井出氏は
「マンションを大量に販売して自転車操業をしているところはない」
と話す。だが、昨年までは人気を集めていた湾岸のタワーマンションについて
「坪単価が150万円~価200万円だった東京・豊洲のタワマンは買える価格帯だったが、坪当たり300万円を超えると売れ行きが鈍くなる傾向が出ている」
と指摘する。タワマンブームにも陰りがみられるようだ。
ただし、都心のマンションの購入意欲は依然として高く、
「駅から数分の交通の便の良いマンションは今でも奪い合いが起きている」
という。以前は「住宅すごろく」では郊外の一戸建てが「上がり」だったが、いまは都心のマンションを取得することが「上がり」になっている。都心のマンションの方が郊外の一戸建てよりも資産価値が高いためだ。今後、23区内を含め都内のマンションの供給は減ってくるので、都心のマンションは希少価値が出てくる。
しかし、ここまでマンションの価格が上がってくると、住宅を購入しようとする世帯の最も多い年収600万円~700万円のサラリーマンが購入可能なマンションは年収の7倍が限度とすると、貯金が1000万円ほどあったとしても、5000万円~6000万円台が上限になる。
この資金では、東京23区内の75平方メートルある新築マンションの購入は難しい。マンションを買うことができる層も減ってくる中で井出氏は、
「1994年から2005年までは年間8万戸のマンションが販売されたが、いまは4万戸を切る状態で、さらに減るだろう。これからは、マンションを購入できる層をどれだけ作れるかどうかが、マンションが今後とも売れるかどうかのポイントだ」
と話す。かつては国が公団住宅を積極的に建設したり、住宅ローン減税などにより一戸建て住宅、マンションを購入させようと助成策を相次いて打ち出してきたが、いまの超金利、財政難の状況では、政府が新たに規模の大きな住宅促進策を打ち出すのは難しいのが現状だ。