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2018年8月6日

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 オンタリオがUBIを見放した理由の一つに、今年に入って欧州で初のUBIを導入したフィンランドが今年4月、同様に制度の廃止を発表したことが挙げられる。北米に比べて社会保障制度が手厚いとされる欧州でも機能しなかった制度に未来はない、という決断だ。

日々の暮らしへのプレッシャーから解放

 しかし当初3年間の予定だったプログラムが1年で中断となったことで、UBI対象者の中からは戸惑いの声も聞かれる。カナダでは子供の5人に1人が貧困層、と言われ、米国と並んでOECD諸国の中で最も高い数字となっている。打ち切りを告げられた対象者からは「UBIがあることで日々の暮らしへのプレッシャーから解放され、よりヘルシーな食べ物を得られるようになっていた」「失業中だったのですぐにも仕事を見つける必要がある」といった声が上がっている。

 UBIに関しては米カリフォルニア州ストックトン市が、早ければ今年9月から市内の貧困層およそ100世帯に月に500ドルを支給する、というプログラムを開始する予定だ。しかしストックトンは財政破綻をきたした自治体でもあり、財源をどうするのか、といった課題を指摘する声もある。

 ストックトンの場合、地理的にシリコンバレーに近く、UBIを支持するシリコンバレーの成功者のバックアップがある。例えばフェイスブックの創立者の1人であるクリス・ヒューズ氏はこのプログラムに100万ドルを寄付しているが、財源としてそれだけでは不足しているのは明らかだ。また人口の4人に1人が貧困層、とされるストックトンで対象者がわずか100世帯ではUBIの恩恵を測るにはあまりにも規模が小さい、という問題点もある。

 UBIの目的は社会格差を縮小し、人々に「健康で文化的な生活を保証する」ことにある。しかしそのためにはUBIを受け取る収入制限も必要で、現行の社会保障制度、失業保険や生活保護、疾病手当、子供手当などとどう区別化するのか、という議論も必要となる。すでに2つの試みが失敗と言える結果に終わった今、UBIは本当に社会的に機能するのかが不透明になりつつある。

  
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