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Washington Files

2018年8月27日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

3人の不安材料

 さらに今後トランプ・ホワイトハウスの前途には、いくつも不安材料が待ち受けている。主なものとして、

  1. コーエン氏の今後の「ロシア疑惑」関連証言
  2. マナフォート被告に対する追加公判内容
  3. マイケル・フリン元大統領補佐官(国家安全保障担当)裁判の行方

 などがある。この中で最も注目されるのは、今や完全にトランプ大統領から寝返ったかたちとなったコーエン氏が、今度は具体的に「ロシア疑惑」についてどれだけ踏み込んだ発言をするかだ。

 担当弁護士のラニー・デービス氏は22日、ワシントンポスト紙などとのインタビューで「コーエン氏はモラー特別検察官にとって関心ある『知識』を持っており、今後知っていることすべてを喜んで話す用意がある」と述べ、この『知識』の内容については「ロシアによる米大統領選への干渉に対するトランプ氏の共謀の可能性のみならず、民主党幹部の個人メール・ハッキングという犯罪行為をトランプ氏が事前に知っていたかどうか、といった点も含まれる」とつけ加えた。

 とくにコーエン氏のこれからの言動が重大な意味を持つのは、すでに法廷で8件の容疑について自ら罪を認めたことから、捜査当局や裁判所での今後の尋問で「黙秘権」行使などができなくなり、これまで明らかにしなかった新事実を積極的に語り始めるとみられているからだ。

 さらにコーエン氏に対しては同日、大統領の個人的慈善組織「ドナルド・トランプ財団」
に関してニューヨーク州徴税局から喚問状が出されたことも明らかになった。

 「トランプ財団」については、大統領就任以前から、“慈善”目的を隠れ蓑にしたさまざまな脱税疑惑がかけられており、コーエン氏はトランプ氏の最側近の顧問弁護士として税処理などにも直接関わってきただけに、今後の証言次第では、秘密のベールに包まれていた同財団の活動実態も明るみになる可能性もある。

 次に、マナフォート被告の今後の法廷審理も見逃せない。

 同氏に対しては、これまで脱税など8件の容疑で有罪が確定したことで、最悪の場合「最高懲役80年」が言い渡される見込みだが、さらに9月17日には、ワシントンDC連邦地裁で「FBIに対する偽証」「海外資金洗浄」「外国ロビイスト活動法違反」などの容疑を めぐる審理が待ち受けている。

 USAトゥデー紙などの報道によると、検察当局は、バージニア州連邦地裁で追及した時の「2倍以上」の豊富な証拠物件・資料を用意し自信を強めており、陪審員による審理で「有罪評決」が下された場合、さらに追加で「20年の懲役」が科せられることになるという。

 そこで検察側としては、マナフォート被告に対して、「刑期減免」と控えに捜査協力を呼びかけ、「ロシア疑惑」解明につながる有力情報を引き出したい考えだ。

 マナフォート被告はコーエン氏とは異なり、これまでの法廷審理を通じ徹底して容疑を否認してきたほか、トランプ大統領とのかかわりについても固く口を閉ざしてきた。このため、大統領は最近、あいつぐツイートで、寝返ったコーエン氏を批判する一方、マナフォート被告については「彼はコーエンと違って(検察の圧力にも)折れない。なんという勇敢な男か!」などと称賛したほどだった。

 しかし、すでに法廷の場で厳しい裁きを受け進退きわまりつつある同被告が、今後どこまで捜査協力を拒否し続けられるかは、予断を許さない。

 さらには、トランプ大統領就任当時、大統領補佐官の要職にあったフリン氏に対する量刑審理がある。

 同氏はすでに昨年12月、特別検察官の捜査過程で「偽証」などの罪を自ら認め、その後「ロシア疑惑」問題について検察側の捜査に協力してきた。

 ニューヨーク連邦地裁での次回「量刑」審理はいったんは8月24日に予定されていたが、検察側、弁護団双方の合意により、9月17日まで延期されることになった。

 延期の理由について、ネット・メディア「ポリティコ」は関係者の話として、モラー特別検察官側が、フリン氏からさらに有力情報が得られることを期待しているからだとしている。

 フリン氏は2016年大統領選挙の際、トランプ候補の外交・安全保障問題顧問を務め、当選後、そのまま大統領補佐官としてホワイトハウス入りしたが、就任後まもなく、ロシア政府関係者と密談していたことが発覚し、辞任に追い込まれた。


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