2024年11月5日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年9月14日

 8月24日、豪州では、スコット・モリソン前財務相が、新しい豪州の首相に就任した。モリソン首相は、就任後初の外国訪問として、隣国インドネシアを訪問した。8月31日、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領とモリソン首相は首脳会談を行い、同日、「オーストラリアとインドネシア共和国との間の包括的戦略的パートナーシップに関する共同声明」が発表された。

(Andrei Martin Diamante/John Short / Design Pics/iStock)

 同共同声明では、両国の包括的戦略的パートナーシップの内容として、5つの柱が掲げられた。1つ目の柱は、「経済及び開発のパートナーシップの強化」、2つ目は、「人を結び付けること」、3つ目は、「両国及び地域の共通利益を守ること」、4つ目の柱は、「海洋協力」、そして5つ目が、「インド太平洋の安定と繁栄への貢献」である。

 このうち、最後の「インド太平洋の安定と繁栄への貢献」の一部分を引用して紹介する。

 「我々はルールに基づいた地域の在り方を促進する。それは、開かれたもので、透明で、寛容なもの、強圧には抵抗力が強く、国際法の規範や価値を尊重し、紛争の解決には対話と外交をもってする。我々は、これらの目標のために、インド太平洋地域の友好国とともに、引き続きASEANを中心とすることを強調し、多国間の機構、特に東アジア・サミットを通じて協力する。」

 豪州の首相が、アボットからターンブル、さらにモリソン氏に変わっても、豪州外交の基本路線は変化しない。インド太平洋地域の発展のために、インドネシアと協力を進めるというのが、共同声明の概要である。「インド太平洋」という言葉は、米国が「太平洋軍」を「インド太平洋軍」と今年名前を変えてから、域内の外交用語でも定着してきた。これによって、大国インドを仲間に入れることになる。そして、その主眼は、「海洋協力」である。インドネシアは、インド太平洋地域の中心に位置する海洋国家である。国際法を遵守して、開かれ国際秩序を守ることは、域内各国の共通利益であることを、共同声明は訴えている。「強圧的態度に対しては、強靭性をもって」というくだりは、暗に中国を批判している。

 「包括的戦略的パートナーシップ」という題名の通り、包括的であるが、抽象的内容になっている。豪州とインドネシアとの具体的協力案件は、今後、外相会談等を通じて詰めて行くことになるだろう。その結果は、毎年、首脳に報告されると、共同声明は謳っている。

 豪州とインドネシアの首脳会談が開催されていた時期は、丁度、アジア競技大会がインドネシアで行われていた。この大会を成功裡に終わらせたインドネシアは、自信をもち、2032年のオリンピック競技大会の開催に意欲を示した。2020年が東京、2024年がパリ(今年、フランスのマクロン大統領が豪州を訪問した際にインド太平洋地域への関与を言及したことは当ブログでも紹介した)、2028年がロサンジェルスなので、もし2032がインドネシアの都市となれば、インド太平洋地域で、平和の祭典が巡回することになる。
 

  
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