自由で、柔軟な働き方には、
実は危険性がはらんでいる
パワハラをする上司は、主に2つのパターンにわけられます。1つは、その上司の人格などによるもの。もう1つは、仕事やプロジェクトに予算や時間などの面で無理がある場合などです。社長や役員がこういう問題を感じ取り、未然に防ぐことが必要なのですが、実際はそのようなことが行われていないのです。
私が気になるのは、パワハラをする上司の中には、「会社や部署のために」「(部下である)お前のために」と言いながら、何かの理由やきっかけで一線を越えてしまっている人がいることです。たとえば、自らの昇格が遅れていたり、プライベートで問題を抱え込んでいたり、学歴や職歴などで強い劣等感をもっていて、それらを解消しようと部下を責めたてているのではないか、と思うのです。最近は、このタイプが増えているようにも感じます。
朝や夜の通勤時にスマホやタブレットなどで何かのやりとりをしている会社員をよく見かけます。上司や部下、取引先などと連絡をとったりしている人もいるはずです。実は、それは「準労働時間」と呼べるものであり、私の造語で言えば、「裏労働時間」と言えます。事実上、上司から部下への指揮命令があり、それに応じて働いているのですから…。これは、「サービス残業」になりかねないのです。そのことを心得ないまま、双方がやりとりをしているのではないかと思うのです。
最近、「働き方改革」のもと、在宅勤務やコワーキング、フレックスタイム制、裁量労働制の導入が進んでいます。労働時間や勤務場所などが自由に、柔軟になることは好ましいのですが、そのことへの警戒心が会社員にあまりないのではなないでしょうか。たとえば、裁量労働制のもと、うつ病などの精神疾患になり、過労自死をしたり、長時間労働のために過労死になる人がいます。
自由で、柔軟な働き方には、実は危険性がはらんでいます。会社がこのような働き方を進めるならば、会社員に負担がかからないために何らかの歯止めが必要なのですが、それができていないのです。特にパワハラは、人の命を奪うことがありうるのですから、もっと注意を払うべきなのだと私は思っています。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。