サッカーでは可能な「直」海外
田沢の「直メジャー」は日本球界に衝撃を与え、大きな波紋を広げた。日本野球機構(NPB)は田沢が「直メジャー」を表明してから間もない08年10月、「アマ選手が日本のドラフトを拒否して海外球団でプレーした場合、日本に戻ってから高校生は3年、大学・社会人は2年、日本のプロ球団に入団できない」という厳しい罰則を設定した。田沢のような選手の流出を防ぐためで、これがいわゆる「田沢ルール」である。
ダイヤモンドバックス入りする吉川にも、この「田沢ルール」は適用される。加えて、プロ球団と契約前に日本野球連盟(JBA)に登録抹消届を提出する義務を怠ったとして、今後は選手としてだけでなく、指導者としても社会人で活動できなくなる事実上の〝永久追放〟処分も受けた。吉川は現実にアメリカに渡る前、日本でプレーする場所を失ったのだ(奪われた、と言うべきか)。
しかし、田沢に続いて吉川が成功すれば、後を追う「直メジャー」選手は遠からずまた現れることだろう。日本球界も、彼らをいたずらに締め出そうとせず、大いなる夢と志を持つ若者たちのためにも、新たなルール作りに取り組むべきではないか。
なお、サッカー界では07年、伊藤翔が日本で初めてJリーグの球団を経由せずに海外のクラブと契約。中京大中京高校からフランス2部リーグのグルノーブル・フット38に入団した。また同校の後輩・宮市亮も高校3年生だった11年12月、イングランド・プレミアリーグのアーセナルに加入するなど、複数の「直海外クラブ」選手がいる。
彼らが欧州で成功したとは言えないにしても、野球界のように日本から締め出されたという事例は寡聞にして聞かない。実際、伊藤は10年から日本に復帰し、清水エスパルス、横浜F・マリノスでプレーしている。この件に関して、野球界がサッカー界に学ばなければならないことは多い。
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