前向きに読み解く経済の裏側

2018年10月15日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

 一方で、たとえば鉱工業生産指数は、景気を語る上では重要な経済指標ですが、投資家たちの注目度は、いまひとつです。それは、投資家たちが「他の投資家たちが鉱工業生産に注目していないので、鉱工業生産が発表されても株価は動かないだろう。それなら自分も見る必要はなさそうだ」と思うからです。

 こうして、皆が注目するものは一層皆が注目し、皆が注目しないものは一層注目されなくなる、というわけです。

 筆者は、株価等々ではなく景気そのものを観察して予測する「エコノミスト」なので、日銀総裁の発言や日銀短観の大企業製造業業況判断DIといった市場関係者の注目度の高いものよりも、鉱工業生産等々の方を見るようにしていますが、これは関心や目的の違いによるものであって、どちらが正しいという物ではありません。読者も、関心によって何に注目するかを決めれば良いのです。

 アベノミクスが始まり、黒田東彦日銀総裁が異次元の金融緩和を宣言した時、株価は上昇しました。宣言しただけで、未だ金融緩和が実施される前から株価が上昇したのは、投資家たちが「世の中に資金が出回るから株価が上がるだろう。その前に買っておこう」と考えて買い注文を出したからです。本稿では、彼らのことを「黒田教信者(失礼)」と呼ぶことにします。

黒田日銀総裁は間違えていると、知っていた

 しかし、筆者を含む銀行関係者は「日銀が金融を緩和しても世の中には資金は出回らない。黒田日銀総裁は間違えている」と知っていました。では、銀行関係者は株を買わなかったでしょうか。そんなことはありません。

 ちなみに、筆者は零細投資家として、株式に投資をしています。そこで、黒田日銀総裁が就任した時、株を買いました。元手は小さかったですが、おかげさまでそこそこ儲かりました。

 なぜ買ったのかといえば、上記のように、美人投票に於いては、他の投資家が買う物を他の投資家より先に買えば良いのであって、他の投資家が信じている事が正しいか否かは関係ないからです。

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