書類を読んだだけで門前払い
問われるのは家裁の独断なのに
案の定2015年10月、家裁立川支部は、百沢の申し立てを却下した。つまり審理にも当たらないとして門前払いする審判を下した。審判理由の抜粋は次の通り。
講評しよう。この案件は、07年に家裁八王子支部が事務分掌と称して、〝お見合い〟の機会さえ設けず選任した財産担当成年後見人、弁護士Mに対して、身上監護担当成年後見人の百沢が、一緒にやっていけないと訴えているという内容である。仕事のパートナー選びは本来とてもデリケートな配慮が求められる上、このパートナーは百沢家の財産から報酬を得るのである、それなのに家裁は百沢力の意向を顧慮せず選任したのであり、本質は家裁の独断こそが問われているのだ。
その家裁裁判官であるならば、「一件記録によれば」のように書類だけに頼るのでなく、面談して耳を傾け問題の本質を見極めるべきである。ましてや、弁護士と一般人の主張が対立しているのであれば、司法受けする書面を作成する能力には格段の差があり、その格差を考慮しなければならない。実情を聴取することもなく門前払いなど不埒千万である。
さらに、百沢が解任を申し立てるに至るまで家裁は何をしていたのかという疑問が浮上する。審判理由で書いてあるMに対する評価がすべて正しく「成年後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由は認められない」としても、相方が耐えられないと言っているなら、無理やり分掌させても事務がうまくいくはずがない。漫才コンビでもボーカルグループでもそうである。
不動産取引をめぐる2人の争論についても、どちらの言い分が正しいのか判別するよりも、両者の間に信頼関係が構築できない実情を直視し、その打開策を求めるのが建設的な対応だと考えるが、家裁はそうした選択をしなかった。
成年後見事務を分掌させた家裁は、身上監護担当の百沢を監督するばかりでなく、財産管理担当の弁護士Mをも監督しなければならないはずだ。例えば「お見舞いの経費を百沢に、きちんと渡しているのか」とMに尋ねたことが、家裁にはあったのか。家裁は調停離婚も担っており夫婦関係を知悉するプロのはずだ。その特技を援用し審尋の段階で、双方の話をよく聞き、改善できる点があれば忠告しなければならない。駄目ならパートナーを選び変えれば済む話だ。弁護士は今、人余りである。
こう見てくると、家裁の無為無策が、不要な訴訟事に至らせたと考えざるを得ず、一般の民事・刑事裁判をまねたように、Mの地位保全のため適格事由を構築するのは論議の空回りで、税金の無駄遣いである。