姻族の伯母・松尾由利子の成年後見人になって、私がまずやらねばならなかったのは、金融機関を回っての由利子の預貯金回収だ。先に触れたように、私を後見人に選任する「審判書」が出たのは2009年10月6日。だがその発効には、神戸家裁の「審判確定証明書」と、東京法務局の「登記事項証明書」を取得しなければならないことを知らされた。同一内容の再々確認であり、必要性が分からない。全てが揃うまでに20日以上を要した。
繁雑な作業は弁護士にと思っていたが、「成年後見人ご自身で対処されるよう法規定されています」と突き放された。
金融機関によってバラバラ
神戸の由利子が住んでいた市営住宅に何度も足を運び、室内や郵便受けから通帳や金融機関から届いた書類を集める。それを手掛かりに、ゆうちょ銀行はじめ割り出した5つの金融機関に片っ端から電話を入れ、成年後見人であると告げ、面談予定を組んでいった。
後見人の威力を水戸黄門の印籠のように感じた。だが各行により必要な書類などが次の通りバラバラ。ある年齢に達したら、後生の面倒を省くため、預貯金を一本化しておかねばならないと痛感した。
成年後見人(筆者)の印鑑と身分証明書に加え、
◎ゆうちょ銀=審判書、同確定証明書、被後見人(由利子)の健康保険証コピー
◎某メガバンク=審判書、成年後見人の実印、印鑑証明書
◎A地銀=審判書
◎B信金=審判書、同確定証明書、登記事項証明書と実印、印鑑証明書
◎C信金=審判書、印鑑証明書
※法的には審判書のみでよい
10月23日に、神戸のA地銀から875万円余りを回収したのが第1号で、12月2日までに計約3500万円を回収した。私の立て替え金や後に述べる救急病院への支払いなどを精算した後の3351万4710円が、10年1月1日現在で私が管理する由利子の資産となった。由利子が保険外交員をしながらこつこつ貯めた金を大切に管理し、由利子の最晩年が少しでも楽しいように費消したいと思った。
回収のための神戸通いも、私にとって難行苦行だった。1行の処理に3時間は要するのである。倒れる前の由利子が、通帳や印鑑などを持ち歩いていたと冒頭に書いたが、この印鑑が金融各行の登録印と異なり、通帳も見つからない場合が多い。そこで①通帳・印鑑の紛失届を出し、②新通帳を作り、③それを解約し、④最終的に新設の「松尾由利子 成年後見人 松尾康憲」名義の、ゆうちょ銀口座に振り込む、という作業を繰り返した。