2024年11月24日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年8月25日

 内外の軍事専門家が言うように、中国の空母が多数の艦船と戦闘グループを形成し、威力を発揮するまでには、さらに数年~10年の時間が必要だろう。日本の軍事筋は、世界で最も先進的な海上自衛隊の艦隊や米海軍第7艦隊に比べれば、中国の空母は「まったく脅威ではない」と言い切った。事実上の“空母”と言われる海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」(排水量1万3950トン)や、横須賀を母港とする米原子力空母「ジョージ・ワシントン」(同9万7000トン)の威力は大きい。

不健全な大国意識を支持せず

 やはり怖いのは「国防」という大義名分の下で、軍備拡張に何のためらいも感じず、周辺国の懸念などどこ吹く風という中国指導部や国民の意識の方だろう。内閣官房参与の松本健一氏は記者会見で中国の古典を引用しながら中国側に苦言を呈した。

 「孫子の兵法には『兵者不祥之器、非君子之器』(兵は不祥の器にして、君子の器にあらず)とある。兵や軍事は喜ばしいものではない、本来、天子はこれを手にしてはいけないという意味だ。空母保有の説明を聞いても、古典に基づく反省が感じられない。日本は戦争中にそうした自制の発想がまったくなかった。その欠陥が今の中国軍にあるのではないか」

 戦争へ突っ走った戦前の軍国主義日本の過ちを中国に繰り返してほしくはない、との松本氏の懸念を共有する。不健全な大国意識に基づく軍備拡張は、決して国際社会に支持されないだろう。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信中国総局記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
※8月より、新たに以下の4名の執筆者に加わっていただきました。
森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)
三宅康之氏(関西学院大学教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)
◆更新 : 毎週月曜、水曜

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