EU27カ国は天然ガス輸入量の40%、石油輸入量の30%をロシアに依存している。ロシアはウクライナとの天然ガスの価格交渉が難航した際に、過去2回、天然ガスのパイプラインを閉じた。いずれも厳冬期だった。天然ガスの大半をこのパイプライン経由で輸入しているEU諸国は震え上がったに違いない。再生可能エネルギーの導入がロシアへの依存度を下げるようになるには、まだまだ時間がかかりそうだ。
ドイツ・ルール大学の研究者らによると、太陽光発電による二酸化炭素の削減コストは、1トン当たり716ユーロ。欧州の排出権価格は17ユーロ程度なので、太陽光発電は効率のよい温暖化対策とは言えない。
ドイツのFIT導入により育成された企業として、太陽電池メーカー・Qセルズ社が数年前に多くの報道で取り上げられた。また、デンマークの風力発電設備メーカー・ベスタス社も成功例として紹介された。Qセルズ社、ベスタス社などの欧州メーカーもビジネスを大きく伸ばしたのだろうか。
10年に世界で供給された太陽電池の80%はドイツ、スペインなどの欧州市場で導入されたが、電池を供給したのは、主として中国、台湾メーカーだ。10年の世界シェア第1位は中国サンテック社。かつて世界一であったQセルズ社のシェアは5%であり、世界第7位まで後退している。Qセルズ社の電池が全てドイツで販売されたとしても、ドイツでのシェアは10%しかない。
風力発電では、7年前に世界シェア約3割を誇っていたベスタス社も、世界第1位の地位を保っているものの、10年のシェアは15%を切るまで落ち、北欧の工場閉鎖で3000人のリストラを行うまでに追い込まれた。台頭しているのは、やはり中国メーカーだ。第2位は06年に初めて風力発電設備の製造を始めた中国シノベル社だ。政府が大きい市場を提供しても、欧州メーカーの成長には限度があったということだ。
欧州メーカーも製造拠点を欧州外に移転している。Qセルズ社はマレーシア、ベスタス社も中国などで製造を開始した。つまり、新興国企業が製造できる技術レベルの製品ということだ。
雇用面でも効果は出ていない。ドイツ環境省は再生可能エネルギー関連産業において20年には40万人の雇用が創出されるとしているが、その一方電力価格の上昇などにより失われる雇用も大きく、雇用の純増は5万6000人に留まると発表している。しかもこれは輸出振興策を前提とした数字だ。
欧州より再生可能に向かない日本
日本と欧州の違いについてもよく理解しておく必要がある。