2022年9月25日(日)

Wedge REPORT

2011年8月26日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 発電量は小さいとしても、新しい環境ビジネスを育てるからよいとする考え方もあるかもしれない。3500万kWの太陽光発電設備の投資額は、現状のパネル単価で計算すれば20兆円程度だ。10年後に価格が3分の1に下落するならば、10年間で14兆円程度になる。平均で年1・4兆円だ。自動車の出荷額年間55兆円と比較すると、産業の規模としては小さく、電力の消費者が行う大きな負担に比べて産業振興は釣り合わないだろう。しかも、欧州の先行事例を見ると設備受注の大半は中国、インドの新興国企業になりそうだ。

 われわれは、何を目的に再生可能エネルギーを導入しようとしているのか。

 「環境性能」については、日本企業の技術を利用して海外で温室効果ガスを削減する方が、再生可能エネルギーの数十倍の費用対効果を生む。

 「競争力のある価格での電力供給」も大きな政策課題だ。イタリア、スペインでは、大規模に太陽光発電設備を導入した事業者が、国民と産業界の大きな負担の下で利益を得た。日本でもFITを導入すれば、国民から大規模事業者に資金が流れる。その上、電力の安定供給のために他の電源への投資も必要とされるのであれば、国民の負担はさらに大きくなる。

 原発への国民の視線が厳しくなり、近い将来の電力供給に不安のある現在、最も重要な課題は「安定供給」ではないのか。太陽光、風力発電はその原理からして安定供給には寄与しない。

 震災後の経済を立て直すためにエネルギー政策で最も大切なことは何であるのかを考えた場合、短期の目標は再生可能エネルギー導入で満たされないことは、はっきりしている。現実の政策目標と長期の夢と企業家・政治家の欲望を先ず分けて、冷静に政策を考えることから始める必要がある。

耐え難い福島原発事故により、脱原発の機運が高まっている。事故を直視しつつも、国民の命を守るための国家の大計とも言えるエネルギー政策について、冷静な議論を重ねるべきだ。WEDGE9月号第2特集「これからのエネルギーを考える」では、本記事を含め、見過ごされがちな論点について整理している。
第1部 再生可能エネルギーに頼れない理由
第2部 電田と通信に共通する孫正義商法
第3部 「原発は安くない」は本当か
第4部 軽水炉と太陽光の弱点補うトリウム原子炉

 

◆WEDGE2011年9月号より



 

  


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