2024年4月25日(木)

World Energy Watch

2018年12月13日

フランスが燃料価格引き上げに熱心なのはなぜ

 フランスは原子力発電大国だ。米国に次ぎ58基の原発を持ち総電力供給の72%を賄っている(図-1)。

 このため二酸化炭素排出量は少ない。そんな中で目立つのは、自動車からの二酸化炭素排出量だ。先進国の自動車からの二酸化炭素排出量シェアを見ると、燃費の良い小型車が多い日本では16%程度、遠距離を自動車で移動することが多い米国では28%だが、フランスのシェアは40%を超えている(表)。

 これは、全体の排出量が少ないためだが、フランス政府は温暖化対策のためには自動車からの排出削減が必要と考え取り組んできた。

 今年6月フランスの多国籍エネルギー企業トタルの製油所が営農者により取り囲まれる事態が発生した。温暖化対策としてバイオ燃料の利用を進めるフランス政府が、価格競争力のあるパーム油30万トンの輸入を認めたため、バイオ燃料の原料製造を行う営農者が憤り搬入阻止のためパーム油を使用する製油所を取り囲んだのだ。

 フランス政府は、化石燃料、ガソリン、ディーゼル油の使用量削減にも熱心に取り組んでいるが、その一つの手段が炭素税と呼ばれる環境税だ。炭素税は燃料価格を上昇させることにより燃料使用量減少を図り、結果として二酸化炭素の排出量を削減する手法だ。

 図-2の通り、需要と供給が一致する点において価格P1と数量Q1が決まるが、環境税が課せられると価格が上昇し、需要と供給が一致する点はE’になる。消費数量はQ1からQ2に減少し、二酸化炭素排出量も削減される。また、環境税により政府が得た歳入は、温暖化対策に寄与する政策に用いることも可能になる。

 環境税の問題は、価格上昇により経済と生活に影響があることだが、温暖化対策として炭素税が用いられる場合には、削減が温暖化対策にどれほど寄与したのか、その効果を知ることができない問題もある。即ち、費用対効果が分からないままに炭素税を導入することになり、温暖化対策としてどれほど有効かの判断はできないまま税率を決めることになる。


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