2024年6月18日(火)

公立中学が挑む教育改革

2018年12月28日

できるかできないか、はっきり言ってよ

 生徒で構成する麹中祭の実行委員会が動き始めたのは、開催からさかのぼること3カ月、夏休みに入る頃だった。

「動き出しは遅かったんです。昨年は体育祭が終わった後の6月頃から準備を始めていたんですが、今年は学校全体のいろいろな事情が重なってしまって……。実行委員会が正式に活動を始めたのは9月からでした。もともと2日間を予定していた開催日程も1日に短縮となってしまいました」

「麹中祭」の実行委員長を務めた春木環奈さん(3年生)

 実行委員会の主軸を担う報道局のリーダーであり、実行委員長も務めた春木環奈さん(3年生)はそう話す。意外なことに、あの祭から数日を経て話を聞いた際には、まず「反省点」から語られたのだった。

 冷静に当日までの段取りを振り返るのは春木さんだけではない。同じく報道局のメンバーであり、実行委員会でも存在感を発揮した豊田麗さん(2年生)も「個人的には後悔が残っています」と言う。

「麹町中学校は生徒主体の学校だと言われています。それなら僕たちは、先生たちの事情とは関係なく、6月くらいから勝手に動き出すべきだったんじゃないかと思うんです」

 限られた時間の中で、観客を楽しませるためにやるべきこと、やらなければならないことはたくさんあった。実行委員会に集まった有志の生徒は約60名。これを「舞台班」「報道班」といった役割ごとにチーム分けし、それぞれの進捗を確認しながら進めていった。音響も照明の出来栄えも、すべて自分たち次第だ。

「『頑張る』じゃないんだよ。できるかできないか、はっきり言ってよ」

 準備期間中、筆者が実行委員会の会合を見学させてもらった際には、そんな言葉が飛び交う緊迫した場面にも出くわした。

終始冷静に語る実行委員の豊田麗さん(2年生)

「期限が迫っていて、確実に進めなきゃいけない。そんなときにあるチームの進捗を聞いたら『遅れているけど頑張る』という返事だったんです。でもそれだけだと、助けが必要なのか、必要だとすれば何をしてほしいかが分からないじゃないですか。だから『できるかできないかをはっきりさせてくれ』と言ったんです」

 豊田さんはそう話す。何とも身につまされる話だ、と筆者は思う。

 困難な状況に直面して、つい「頑張ります」と言ってその場のプレッシャーから逃げてしまうことは、大人でもよくあることだろう。大人たち同士は何かを察して、それ以上の追及をしないこともある。その「なあなあ」の先にはより深刻な事態が待ち受けていることを予見しながら、だ。

 しかし春木さんや豊田さんをはじめとした実行委員会のメンバーは、「なあなあ」に陥ることなく徹底的に詰めた。だからこそ、あの会合には張りつめた緊張感があった。そしてそこに、先生は一人もいなかったのだ。このリーダーシップはどこから生まれたのだろう。


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