WEDGE REPORT

2018年12月20日

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尾崎史生 (おざき・しお)

ジャーナリスト

協業で作り出す5G時代のサービス

 世界各国で中国製通信機器を排除する動きが表面化している理由は、裏を返せば、それだけ次世代の通信技術である「5G」がもたらす産業構造変化のインパクトが大きいからだ。

 携帯電話の技術は10年ごとに大きな進化を遂げてきた。5Gは現行の4Gに次ぐ、第5世代目の仕様だ。

 主な特徴は3つある。最大20ギガ(ギガは10億)ビット/秒という「高速・大容量」、通信の遅れがわずか1ミリ秒という「低遅延」、そして1平方キロメートル内に100万デバイスの接続が可能という「大量接続」だ。

 従来の携帯電話技術は、世代を追うごとに主に高速・大容量の観点で進化してきた。例えば2010年から12年にかけて国内導入された4Gネットワークは、時を同じくして登場した米アップルの「iPhone」をはじめとしたスマホとうまくマッチし、携帯電話事業者のビジネスに好循環をもたらした。高速・大容量化した4Gネットワークが、スマホがもたらす通信量の爆発的な増大という需要の受け皿となり、ネットワークへの投資と回収のサイクルをうまく回す結果となったからだ。

 5Gは、これまでの世代の技術とは少し異なった発展を遂げそうだ。世界的に見ても先進国では契約数の伸びが鈍化し、スマホ市場は成熟している。一般消費者向け市場の限界が見えるなか、各国の通信事業者は5Gを企業向けの新たなビジネスの起爆剤としようと捉えている。

 「5Gはデジタルトランスフォーメーションを実現する最も大きな要素だ。パートナー企業との共創が鍵を握る」。12月6日に開催した5Gに関する自社イベントに登壇したNTTドコモの吉澤和弘社長はこのように語った。

 NTTドコモのイベントでは、会場内の至る所に5Gを活用した新たなサービスが並んだ。そのほとんどが企業と共に作り上げたサービスだ。

 例えばフジテレビとの取り組みでは、サッカー試合の中継を、高精細映像とタブレット端末の拡張現実(AR)を通じて見せた選手情報などと共に5Gで伝送した。

 東京女子医科大学との取り組みでは、5Gを活用して手術中の患者の患部の映像やメスなどの機器情報を遠隔の医師に伝送。遠隔医療に役立てるようなサービス像を示した。KDDIやソフトバンクも同様に、企業と協業して5Gの新たなサービス作りに取り組んでいる。

 これまでの携帯電話では、企業が商用化前の技術に関心を示すことはほとんどなかった。5Gの新機能は、それだけ企業にとって新しい商品やサービスを生み出す土台として魅力的ということだ。ARや遠隔医療、さらには自動運転のインフラなど、5Gはあらゆる産業に浸透する可能性がある。5Gを人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術と組み合わせることで、幅広い産業の構造自体を変えるポテンシャルも持っている。

 5Gのこうした幅広い産業へのインパクトは、国家間の競争を呼び起こしている。米国は18年後半からいち早く5Gの商用化を進めており、5G時代の新たなデジタル覇権を目指している。もう一つの大国である中国も19年に大規模な5Gトライアルを開始予定だ。13・9億人という世界最大の人口を持つパワーを生かし、5Gを工場の自動化や自動運転など社会インフラへ生かす取り組みを進めつつある。

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