2024年7月15日(月)

日本のなかの外国を歩く

2011年9月8日

 このように偽コックを受け入れる中華料理店にとっては、書類料と手数料の合計約100万円が懐に入る上に、コックがただ同然の人件費で働いてくれるという形になる。激安ブームに沸く中華街では、人件費削減は、強力な武器なのである。

 「実際、中国の地方政府機関から発行された『一級厨師(コック)』の免許を持ち、招聘した中華料理店で働いていれば、そのコックや料理店を摘発することは不可能に近い」と警察関係者は嘆いている。

新華僑のマネーの出所は

 この中華街のビジネスに参入するには、数億円の権利金や数千万円の内装費などが必要となる。ところが、ほとんどの新華僑は、その開店資金を金融機関の融資に頼ることはない。現金一括で支払うのだそうだ。どうやって巨額の資金を調達するのか。その出所について老華僑たちは、「腐敗した地方政府官僚が、賄賂などで不法に得た巨額な金をマネーロンダリングするために中華街に店を作った」とか、「中国本土のねずみ講的組織が集めた金を投資した」などと噂するが、定かなことは不明である。だが、巨額な金が、中華街の新華僑の間で日常的に飛び交っていることは確かなようだ。

 配膳の仕事をしながら地元の中華学校に子供を通わせている老華僑の主婦は、「子供の同級生のあいだでも、福建省から来たという子が増えている。その母親のなかには、特別仕事もしていないのに、ブランド品で身を固め、使い切れない程の金を持ち歩いている人も少なくない」と言う。

 7月末に筆者は、世界中に散らばる華僑の故郷とも言われる広東省に出張する機会があった。そこで、親戚が横浜中華街でコックとして働いているという男性と知り合った。この男性は不動産で大儲けをしたという事業家なのだが、こんなことを話してくれた。「数億円で横浜中華街に店が出せるのだったら安いものだ。日本で店を持つことは中国ではステータスだし、中国で政変など何かが起きれば、そのまま日本へ行くこともできる」

 横浜中華街は中国国内から流れ込む大量のチャイナ・マネーによって支配されようとしている。それは、伝統を築いてきたこの街全体を一変しかねない巨大な影響力をもたらそうとしている。 

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