2022年6月27日(月)

日本を味わう!駅弁風土記

2011年9月13日

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「普通」の積み重ね・継続が個性に

 普通の姿で、普通にうまい、いたって普通の釜飯駅弁である。しかしこの普通が、実はもはや普通でない。陶器は重く、駅などでのゴミの取り扱いに困るため、軽く、ゴミの取り扱いにも困らないプラスティック製に置き換えたり、もっと手軽である円形や楕円形の惣菜容器で済ませるケースが多い。また、掛紙をかけてひもでしばると手間がかかるため、ボール紙の帯や箱で代替する。漬物の別添も手間であるから、具の香りを消しても飛ばしても、中で一緒にしてしまう。釜飯の駅弁は人気があるため、内陸部を主として全国各地の駅で見られるが、陶器と、掛紙を使用し、漬物が別添のタイプとなると、なかなか出会えない。

松茸の釜飯 向龍館 950円

 美濃太田の駅弁は、普通を続けることで個性となった。駅弁の立ち売りも然り。釜飯の風体も然り。ところが、美濃太田の駅はかつての普通から今の普通へと変わっている。過去に日本ライン観光の玄関口として賑わった駅は、今では岐阜や名古屋の近郊の駅として通勤通学客で賑わう。1998(平成10)年3月に建て替えられた駅舎は「橋上駅舎」と呼ばれる、プラットホームの真上に改札と通路を置くタイプであり、これは都市の駅そのものである。

 名古屋と高山を結ぶ特急「(ワイドビュー)ひだ」は、美濃太田駅に全列車が停車するが、窓を開けずに30秒だけ乗降扉を開けて、すぐに立ち去ってしまう。そして通勤通学客が軽装で列車を待つホームで、なぜか生き残る駅弁の立ち売り。かつて農村で当たり前の風景を今では「日本の原風景」などと崇めるように、駅弁の原風景と崇拝するには、ずいぶんとミスマッチである。

 昨今、駅弁そのものが消えてなくなる駅も少なくないというのに、なんと立ち売りまで残る美濃太田。これほど凄い、駅弁ファンに言わせれば素晴らしい駅や駅弁の知名度もまた、なぜかあまり高くないように思える。駅弁は我々のような者を除き、旅の主役になることは少ないが、ここを通る機会があれば、しっかり見ておくべきだと薦めたい。

※なお、通常駅で販売している弁当はプラスティック製の容器になります。陶製の容器入りは、事前に予約いただくとお買い求めいただけるほか、向龍館の店頭やイベントでお求めになれます。

福岡健一さんが運営するウェブサイト「駅弁資料館」はこちら
⇒ http://eki-ben.web.infoseek.co.jp/


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