前向きに読み解く経済の裏側

2019年1月7日

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 今回は景気楽観派を自認する久留米大学商学部教授の塚崎公義が、今年の日本経済を考える上でのリスクシナリオについて考えます。

 今年の日本経済も、メインシナリオとしては順調な拡大を続けると考えて良いでしょう。しかし、昨年1年間で複数のリスクの芽が現れて来ましたので、今年の経済を考えるに際しては、リスクシナリオにも目配りしておく必要がありそうです。そこで今回は、リスクシナリオについて考えてみましょう。

(Delpixart/Gettyimages)

メインシナリオは好調持続

 日本経済は、緩やかながら拡大を続けています。労働力不足が深刻化してきたことに加えて、「この労働力不足はしばらく続く」との認識が広まって来たことなどにより、企業が省力化投資を活発化させ始めました。これは景気を更に拡大させる要因として注目されます。

 消費税増税は、前回(5%→8%)より小幅ですし、様々な対策も講じられるようですから、景気の腰を折ることはないでしょう。欧米の景気を心配する市場関係者は多いようですが、米国も欧州も中央銀行が金融を引き締め方向に動かしていることを考えると、欧米の中央銀行はそれほど景気を心配していない模様です。

 中国の景気は対米輸出の減少などで減速するでしょうが、過度な懸念は不要です。米国が中国からの輸入を他の途上国に振り替えると、その途上国の景気が拡大するので、世界経済全体としての景気悪化は限定的なものとなるからです。

 しかし、リスクシナリオとして、可能性は低いけれども留意しておくべきリスクの芽は複数見られます。代表的なものを挙げておきましょう。

中国経済の極端な悪化が急激に進む可能性

 米国は、中国との覇権を懸けて「冷戦」に突入しています。中国を痛めつけるためなら自分が痛みを負っても構わない、という本格的な対中強硬論が支配的となりつつあります。

 そんな中、中国の大手企業の幹部がカナダで逮捕され、直後に中国で複数のカナダ人が逮捕されました。これが仮に中国政府の報復だとすると、中国在住の他のカナダ人が身の危険を感じて帰国するかもしれません。カナダ企業も撤退するかもしれません。そして、それがカナダ以外の西側諸国全体に広がったとしたら、中国経済は一気に落ち込むことになるでしょう。

 西側企業が中国から撤退した分を他の途上国に移すのであれば、世界経済全体としての落ち込みは限定的でしょうが、動きが急すぎると、代替工場が立ち上がる前に中国の工場が大量に閉鎖されることとなり、世界経済が混乱に陥る可能性もあるわけです。

 また、中国からの資本逃避の動きが一気に加速して人民元相場が暴落し、それを予想した投機筋の人民元売りも重なって中国経済は深刻な事態に陥るかもしれません。

 そうなると、中国国内の政局も一気に混乱しかねません。筆者は中国の政治はわかりませんが、政治家と国営企業の密接な関係があるとすると、政争に敗れた政治家と関係の深い企業は「粛清」されるのかもしれませんね。

 まあ、最悪のシナリオは考えればキリがありませんが、起きる可能性は小さいので、過度な懸念は不要でしょう。

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