補強の目玉・丸だけではない。西武からFAで獲得した炭谷銀仁朗捕手はさらに疑問だ。いくら小林誠司が伸び悩んでいるからと言って、西武でもすっかり3番手以下の捕手に成り下がっていた炭谷の獲得に動いたのはどうしても首を傾げざるを得ない。若手の捕手有望株には大城卓三や宇佐見真吾だっている。さらに来季はベテランの阿部慎之助も引退をかけての捕手再転向が認められているのだから、捕手は飽和状態だ。
小林には課題の1つとして打撃が挙げられる。しかし炭谷の打力も小林を凌駕するほどのレベルではない。今季は47試合出場で打率2割4分8厘、0本塁打、9打点。一方の小林は119試合出場で2割1分9厘、2本塁打、26打点。まあ〝どっこい、どっこい〟といったところだろう。それでも小林がソフトバンク・甲斐の〝甲斐キャノン〟に匹敵するほどの強肩を武器として持ち合わせていることを考えれば、年齢も2歳年上の炭谷を獲った理由がますます不可解になってくる。
「小林が村田真一前ヘッドコーチから余り評価されていなかったのは、チーム内でも有名な話。それもあって原監督は自身と旧知の間柄の村田前ヘッドから引継ぎ案件として小林に関する悪評を耳にし〝やはり別の正捕手候補を獲らなければ〟という思いに拍車がかかったのではないかと推論を立てている人もいる」(事情通)
元エース内海を失う
いずれにしてもマイナスの極めつけは、この炭谷獲得でFA移籍の人的保障として西武にベテラン左腕・内海哲也を奪われてしまったことである。プロテクトを外していたとはいえ、巨人側もフロント幹部の落胆ぶりから察するに西武がまさか峠の過ぎた感の漂う内海を獲得するとは予想の範疇に入れられていなかったようだ。内海はかつて左腕エースとして一時代を築き上げた生え抜きの大功労者であり、投手陣の精神的支柱でもあった。当然ながらチーム内にも未だに「なぜ内海さんをプロテクトから外したのか」「このチームは生え抜きで頑張っていた人でも簡単にポイ捨てされるのか」などといった不満がくすぶっている。
フタを開けてみれば結果的に炭谷と内海の〝トレード〟という形になってしまったこともあり「本当に戦力バランスとしてこれでいいのか」という「?」が全権監督の原監督に向けられるのも残念ながら無理はないだろう。