今時の高卒はオトナになった
こういう環境に置かれた高校生が3年夏の大会終了後に引退したら、どうしても遊びに走ってしまいがちだ。ふつうの高校生と同じように美味しいものを好きなだけ食べて、同級生たちと最後の高校生活を楽しみたい気持ちは理解できる。もう野球部で練習をさせられることはないから、プロ入りまでに体重が増えたり、動きが鈍ったりするのも仕方がない。
わかりやすい例を挙げると、吉田や万波の大先輩、中田翔(12年目=大阪桐蔭)がそうだった。いまから11年前になる2008年1月、高校時代に比べると、推定10㎏以上も太った103㎏の身体でのっしのっしと鎌ヶ谷の新人合同自主トレに登場。体重が増えているのではないかと記者に指摘されると、「動けたらええんでしょう。動けるデブなら最強や」と開き直った。おかげでマスコミに随分たたかれたが、そのころ、太ってプロ入りしたのは中田ひとりだけではなかったのである。
そもそも、現行の新人合同自主トレ自体、まだ身体のできていない新人たちのため、20年以上も前に野球機構(NPB)と選手会労組が話し合って作ったもの。12、1月のポストシーズンは本来、球団側が選手を管理したり、練習やトレーニングを強制的に課したりすることはできない。が、経験のある2年目以降の選手と新人を同列に扱っては故障者が続出するという事情から、現在の合同自主トレの形式が整えられ、球団の施設で行われるようになった。
その自主トレに、高卒新人が最初からコンディションを整えて現れる、などということは、一昔前は考えられなかった。それだけでも、「今時の高卒はオトナになったなあ」と、私のような野球ライターは年寄りじみた感慨に耽らずにはいられないのである。
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