2024年12月23日(月)

解体 ロシア外交

2011年9月29日

 2011年8月20日、北朝鮮の金総書記を乗せた特別列車が露朝国境のロシア側のハサンに到着し、地方のダリキン知事やイシャエフ極東連邦管区大統領全権代表が出迎え、歓迎式典が行われた。この訪問は、メドヴェージェフ大統領の招請によるものとされているが、北シベリアのウランウデで行われた金総書記とロシア首脳の会談は、モスクワ宣言に署名がなされた2001年の前回の訪露以来で、9年ぶりとなった。実は、露朝首脳会談は、今年の6月にウラジオストク近郊で行われる予定となっていたが、情報が漏れたとして直前にキャンセルされた経緯があり、今回の訪露では厳しい情報統制が敷かれた。会談場所としてウランウデが選ばれた理由も、軍関連施設が密集し、秘密保持をしやすいということがあったようだ。

エネルギー協力から食糧援助まで
深化を見せる露朝関係

 この訪露に先立ち、今年の5月頃から、ロシアは北朝鮮との関係を強化する動きを次々と見せていた。

 5月には、フラトコフ対外情報局長官(元首相でもある)が訪朝し、平壌で金総書記と会談した。6月にはロシアの政府系天然ガス独占企業であるガスプロムのミレル社長が北朝鮮の金英才駐ロ大使とモスクワで会談し、北朝鮮を経由してロシアと韓国を結ぶ天然ガスパイプライン敷設問題(後述)を協議した。エネルギー協力は、北朝鮮の核開発断念の見返りとしてロシアの大統領府と外務省の指示で進められているという。

 8月8日には、ロシアのラブロフ外相が水害で困窮する北朝鮮に総計5万tの食糧援助を無償で行うことを表明し、19日に最初の運搬船が北朝鮮に到着した。さらにロシアは、世界食糧計画(WFP)を通じ500万ドル(約3億8000万円)相当の食糧も提供している。

 また、北朝鮮が日本の植民地支配から解放されて66年となる8月15日の光復節には、金総書記とメドヴェージェフ大統領が共に祝電を交換し、ロシア側は「エネルギー、鉄道建設分野」などで、北朝鮮との協力を拡大する用意があり、それは北東アジアの平和と安定に貢献するとも表明していた。

 さらに、軍事協力の再開の動きも進んでいる。8月22日~26日には、ロシア東部軍管区のシデンコ司令官が率いるロシア軍代表団が北朝鮮を訪問し、北朝鮮軍幹部らと会談。両国の陸海軍の協力再開について協議し海軍艦艇の相互訪問のほか、陸軍部隊による合同演習や災害救援演習などの再開が協議された。

 このように、最近、露朝関係の深化が目覚ましいのである。

 そして、金総書記は23日にウランウデに到着、24日にはメドヴェージェフ大統領が同地入りし、首脳会談が開かれた*1

外交の相互メリット

 それでは何故ここにきて、露朝は接近し始めたのだろうか。その背景には、両国の思惑の合致がある。

*1:なお、21日に、金総書記はアムール州のブレヤ駅に到着し、同州のコジェミャコ知事が催した歓迎祝典に出席した後、専用車でロシア極東の最大の水力発電所であるブレイスカヤ水力発電所を視察していた。また、ウランウデ到着後は、当地を管轄するブリャート共和国首脳が金総書記を接待した。金総書記は、バイカル湖でのクルーザー遊び、世界で一番大きいとされるレーニンの頭像のある広場、軍事工場訪問、スーパーマーケットめぐりなど精力的に動いたと伝えられている。首脳会談後の25日に、金総書記は中国経由で帰国した。中国経由での帰国は始めてだというが、中国は金総書記の訪中を主要日程終了前に報じた。それは極めて異例なことであり、中国が北朝鮮との親密さを日本、韓国、米国という他の六カ国協議参加国にアピールしようとしたとも見られている。

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