北朝鮮が第三国と軍事演習を行うのは、1953年の朝鮮戦争休戦以降、初だと考えられている。旧ソ連時代、北朝鮮とソ連は友好協力相互援助条約という軍事同盟を結んでいたが、ソ連崩壊後に失効していた。しかしここで、また軍事協力が進められる背景には、ロシアの北東アジアでのプレゼンス拡大の意図がある。
成果を強調する両国だが…
このように、最近の両国関係の発展は極めて多岐にわたって深化している。
9月14日にも、金総書記がメドヴェージェフ大統領に誕生日の祝電を送るなど、両国の蜜月ムードは深まるばかりだ。そして、ロシア側も北朝鮮側も首脳会談の成果を高らかに強調している。
しかし、その一方で、確実な展望が何も見えていないのもまた事実だ。たとえば、北朝鮮の報道では、6カ国協議の「前提条件なしに一日も早い再開」については発表されているものの、核兵器やミサイルの実験などの一時停止については言及されていないし、ロシアとの間でもその時期などは明言されていない。北朝鮮が、その開始時期を引き延ばす可能性や核実験の一時停止がウラン濃縮などをするための時間稼ぎとなる可能性も否めないことから、国際社会は北朝鮮の今後の動きに懐疑的だ。北朝鮮が本気で核開発の一時停止を考えているなら、米国に対して宣言するべきだという意見もある。
やはり具体的な方向性はいまだ見えていないというのが正直なところであり、北朝鮮が国際的に信頼されていない中では、これらの計画は極めて実現性に乏しいという印象を与えてしまう。
ただ、はっきり言えることは、これらの流れは、国際的・地域的プレゼンスを高めたいロシアと経済的な国力を拡大させたい北朝鮮、さらに中国の影響力をそぎたい両国の思惑が合致した賜物である。日本もロシアと北朝鮮の関係深化の影響から無関係ではありえない。今後の趨勢を注意深く見ていく必要があるだろう。
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