悲観的とも思える田邊氏の見通しだが、それは生来の自主自立の精神に裏打ちされている。30年以上前、仕事量の9割がマツダ向けだったころ、子会社化の打診を断ったことがあるという。当時から「系列は、いずれ崩れると考え、海外含めて自ら営業をかけていた」。今でもこの姿勢は変わらず、「8月には韓国の現代自動車から受注が取れた。世界市場を見ればまだ自動車の台数は伸びる」と顔をほころばせる。
生き残りのためには「同じ部品で世界トップ3に入らなければ駄目」というのが持論。「シェアが大きければ、安くできる」からだ。そのために、この1、2年で海外でのM&Aも視野に入れており「銀行は新規投資に関しては門戸を広げているし、商社からの投資という話もある」とファイナンスの手当てにも目処が付いている。
「リーマンショックも震災もハプニングだが、新興国の工業力がついてきたことは大きな変化だ。この流れは変えられない。自動車産業は裾野が広く、このままでは大失業時代がくる。改善すべきは能力のある人の意欲を阻害する風土だ」。田邊氏の指摘をどう受け止めるべきなのだろうか。
WEDGE10月号の特集『空洞化最終章へ 腹をくくった経営者たち』では本記事の他に以下の記事が読めます。
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◎「世界で勝って国内に還流させる」 ─日本電産・永守重信社長
◎政府は補助金より六重苦解消を
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