国民評議会はカダフィ大佐の居場所について確たる情報はないようだ。実際、国民評議会のジャリール議長は、10月9日、首都トリポリで記者団に、カダフィ大佐の所在に関する確たる情報を持っておらず、リビア国内にいるのか国外にいるのかも分からないと語っている。ただし、そうは言いながらも、恐らくリビア南部の砂漠地帯、それもニジェールとアルジェリアの国境に近い地域に潜伏しているとの見当をつけているようだ。
こうした見方を裏付けるような証言が最近出てきた。カダフィ政権幹部の逃亡を助けたとみられていたトゥアレグ族の代表ムーサ・アル・クーニ氏が、10月10日、トリポリで記者団に対して、
「カダフィ大佐はニジェールとアルジェリアの国境に近い南部砂漠地帯に潜んでいようが、トゥアレグ族が部族として保護しているわけではない」
との見方を明らかにした。ちなみに、ムーサ・アル・クーニ氏の同日の主な発言内容を紹介すると次のようになる。
(1)カダフィ大佐はニジェール政府との親密な関係を築いていたので、国境を越えて行ったり来たりすらできるだろう。私の知る限りカダフィ大佐はニジェール国境沿いの同地域にいる。
(2)カダフィ大佐はニジェールからマリに抜ける安全な通路も利用できるだろう。カダフィ大佐はティムブクト(Timbuktu。サハラ砂漠南端のニジェール川北方15kmに位置するマリの都市。人口は2009年時点で約5.4万人)に居宅を持っている。
(3)カダフィ大佐に雇われたトゥアレグ族の中には依然カダフィ大佐を支援している者もいるだろう。しかし、トゥアレグ部族としてカダフィ大佐を支援することはない。
拘束できないのか?したくないのか?
やはり行方の分からないカダフィ大佐の二人の子息(次男セイフ・イスラム氏と四男モンタシム氏)について、国民評議会のアフメド・バニ大佐・軍報道官は9月28日に、「カダフィ大佐の所在に関する情報については確認することはできない。ただし、セイフ・イスラム氏はバニ・ワリッドに、モンタシム氏はシルトにそれぞれいる」との見解を示した。
子息たちが戦闘の最前線に本当にいるとすれば直ちに捕まえることはできないにせよ、カダフィ大佐については居場所が分かるのであれば、大捜査網を展開し拘束すればよさそうなものである。勿論、捜索部隊を編成し探してはいるようだが全力を傾注しているようには見えない。
何故なのか?
そこには、国民評議会の冷静な計算が働いているのかもしれない。