2023年1月30日(月)

Wedge REPORT

2019年3月9日

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稲泉 連 (いないずみ・れん)

ノンフィクション作家

早稲田大学第二文学部卒。2005年『ぼくもいくさに征くのだけれど—竹内浩三の詩と死—』(中央公論新社)で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。近著に『「本をつくる」という仕事』(筑摩書房)がある。

 そうして設計されたカバー上部の組み立てが始まったのは17年7月。巨大な部材は小名浜港を深夜2時に出発し、朝の8時頃に福島第一原発の物揚げ場に到着すると、「スーパーキャリー」と呼ばれる重機で運ばれた後、クレーンで建屋上部までつり上げられることが繰り返された。現場を担当した岡田は「現地での作業に入る前に充分準備を重ねることができたので、『建設すること』については工程通りに進めることができた」と語るが、その彼にしても最後のパーツが接続された際、心が強く揺さぶられたのは前述の通りである。

 「この7年間、3号機だけで延べ800人の社員が、この現場で入れ代わり立ち代わり働いてきました。彼らが帰っていく度に、『ここのことを正しく伝えてくれよ』といつも言っているんです。『関西支店や九州支店に戻って、この場所のことを伝えるまでがみんなの仕事だぞ』と」

 7年間のカバーリング工事を振り返るとき、そう語る岡田は「何のために俺たちはこの仕事をやるのだろう」と考えるようになった、と続けた。そのなかで、彼が次のような心境を吐露したことが印象的だった。

 「この仕事は何も起こらなくて当たり前で、何かが起これば新聞の一面で報じられるものです。だから、日々のプレッシャーは大きかった。そのなかでいつしかこう思うようになったんです。『国のため』と言う人もいるけれど、廃炉という仕事は本質的に子供たちのためのものだ、と。電力というものを享受してきたわれわれの世代が、次の世代のためにこの場所を何とかする責任がある。今はそう実感しているんです」(文中敬称略)

 

  
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◆Wedge2019年2月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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