ただ、アジアの主要港においては、こうしたインセンティブが付与されるのは珍しくない。だが、安さだけに目を奪われてはいけない。戦略的に構築された釜山港の「使いやすさ」は群を抜いているのだ。
まず、船からコンテナヤードにコンテナの積み降ろしをするターミナルオペレーター。釜山港には10社のターミナルオペレーターがおり、自社のターミナルを船会社に選んでもらうべく激しい価格競争を行っている。それと同時に、リードタイムを削る動きも劇的に進んでいる。
新港北地区に1100メートルの岸壁を持つターミナルオペレーター会社韓進海運新港湾は、コンテナヤードを完全に自動化させた。水深18メートルの岸壁には12基のガントリークレーンが立ち並び、1万2000TEUのコンテナ船が同時に3隻接岸することができる。
コンテナヤードは、21のブロックに分けられ、その間の道路を通ってトラックが積み降ろしをする。ここで使われるクレーンは、ヤードクレーンという門型のクレーンで、長方形をした各ブロックの長い辺の両側にレールが敷かれ、それをまたぐ形で2基ずつ設置されている。
作業員が7分の1の全自動コンテナヤード
自動化されているのは、このコンテナヤードでの積み降ろしだ。コンテナの配置はコントロールセンターで全て管理されている。コンテナトラックがヤード入り口で高速道路のETC料金所のようなゲートを通ると、トラックのICタグが認識され、行き先が指示される。トラックは指示された場所に行けば、ヤードクレーンが自動的に荷の積み降ろしをしてくれる。
韓進新港湾のターミナル全体で42基のヤードクレーンがあり、全てが自動で動く。通常は1人のオペレーターが1基を扱うが、韓進新港湾では1人が6基を操作するため、作業員は150人を23人に減らすことができた。これによって、コンテナヤードに入ったトラックが10分以内に積み降ろしをして出入りすることができるようになった。韓進新港湾のパク・ギルヨン社長は「設備投資額は4300億ウォン(約280億円)。効率を高めるためには自動化が必要だと判断した」と話す。
釜山新港は、全体が自由貿易地域(FTZ)に指定されており、コンテナヤードに出入りする貨物は、物流倉庫を通過する。韓国の大手総合物流企業、天一定期貨物自動車の子会社C&S国際物流センターは、新港北地区に延べ1万坪の倉庫を持つ。