2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2019年3月9日

プーチン氏との会談を想起

 今回の金委員長の言葉を信じるという大統領の姿勢は、昨年7月16日にヘルシンキで行われた米ロ首脳会談後の記者会見をまざまざと思い起させる。大統領はこの時、2016年の大統領選挙にロシアが介入したことについて、「米国の情報機関はロシアが介入したと考えているが、ロシアがそうする理由が分からない。プーチン大統領は今日、極めて強く否定した」と述べた。

 ロシアの大統領選の介入については、米連邦捜査局(FBI)、中央情報局(CIA)とも、ロシアの犯行に間違いないことを明確にしており、トランプ大統領の発言は自らの情報機関よりも、敵性国の指導者の言い分を「信じた」と受け止められ、国内で「国家反逆罪に相当する」などと激しい批判の声が上がった。

 トランプ氏の応援団の1人であるギングリッチ元下院議長でさえ「大統領が犯した最も深刻な過ちだ」と指摘。情報機関を統括するコーツ情報長官にいたっては、この記者会見から数時間後、「ロシアがわれわれの民主主義を破壊するため、大統領選に介入したのは明白だ」と大統領を直接批判するような声明すら発表した。

 トランプ氏はプーチン氏について、選挙期間中からオバマ前大統領よりも有能だなどと称賛。その後も「尊敬している。ロシアとの関係は良い方がいい」などと述べているが、プーチン氏にセックス・スキャンダルなどの弱みを握られているという観測がある一方、元々の“独裁者好き”がプーチン氏寄りの言動を取らせているとの見方も根強い。金委員長も名だたる独裁者だ。

 この他にも、昨年3月の中国の習近平国家主席の任期撤廃に関し「彼は終身大統領だ。素晴らしい。われわれもいつか試してみなくてはなるまい」などと語ったことは記憶に新しい。トランプ氏自身の独裁へのあこがれが思わず出てしまったのではないかと取り沙汰された。同氏がドイツのメルケル首相や英国のメイ首相、カナダのトルドー首相ら同盟国の指導者らをけなすのを目の当たりにすると、“独裁者”への温かな姿勢が一層際立つ。


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