2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2019年3月9日

上院も非常事態宣言の無効を決議へ

 トランプ大統領には、米朝首脳会談で成果を挙げ、2020年の再選への足掛かりにしようとの思惑があったのは間違いあるまい。だが、大統領の期待とは裏腹に、首脳会談は物別れに終わった。そうした中、大統領の足元には現実的な危機がひたひたと押し寄せている。

 米下院司法委員会(ナドラー委員長)が4日、トランプ大統領をめぐるさまざまな疑惑を解明するため、81の個人・組織に資料(証拠)請求を行ったのはその最新のものだ。委員会が追及する疑惑はロシアゲートをはじめ、コミー元FBI長官に対する司法妨害、大統領の権力乱用、大統領就任式実行委員会の不正資金流入、トランプ氏やトランプ・オーガニゼイションの脱税疑惑などだ。

 司法委員会はこの半世紀で2度にわたる大統領弾劾の手続きが開始されたところであり、今回の調査によってはトランプ氏の弾劾に向けた始まりになる可能性がある。トランプ氏はすでに、資料請求には応じないことを明らかにしており、召喚状が送付され、最終的には法廷闘争に持ち込まれるかもしれない。

 民主党が多数派となった下院は2月26日、大統領がメキシコ国境の壁建設のため発令した「国家非常事態宣言」を無効にする決議案を可決した。共和党からも13人が造反して決議に賛成したが、上院も同様の決議案について、来週早々にも採決する見通しだ。

 上院の勢力は現在、共和53、民主系47となっているが、すでに共和党の4人が賛成に回ると発表しており、決議案は可決される見通しだ。むしろ可決されることを前提に、トランプに対する造反者が何人増えるかがいまや焦点になっている。

 しかし、大統領はすでに、決議案に対しては拒否権を行使する方針を明らかにしており、拒否権が行使された場合、これを覆すには両院それぞれ3分の2の賛成が必要。覆すのは不可能と見られている。ただ、実際に非常事態宣言を阻止できなくても、共和党多数派の上院でも、反トランプ決議案が可決されること自体、大統領の苦境を浮き彫りにするものだ。

 ロシアゲートを捜査しているモラー特別検察官は近く、報告書を司法長官に提出すると見られており、報告書の中で「大統領の犯罪」が指摘されるようだと大統領にとってはさらなる打撃となろう。大統領の元側近のスティーブン・バノン氏は6日東京で「2020年の大統領選は史上最も汚く、激しいものになる」と予想した。いよいよ政治的修羅場が始まろうとしている。

  
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