文大統領の脱原発方針のまやかし
2017年5月の大統領就任後、6月19日に文大統領は、「安全性と環境に関する国民の声を受け脱原発と脱石炭を進め、再エネと天然ガスの利用を促進するエネルギー転換政策」を発表した。
具体的には原発6基の新設計画を撤回、さらに建設中5基の原発の内進捗率が28%の2基の建設中止、運開後40年での原発閉鎖、石炭火力発電所の新設中止、建設中の9基の石炭火力のゼロベースからの見直し、天然ガス火力の稼働率向上、再生可能エネルギーによる電力供給シェアを2030年20%にという内容だった。
政策を具体化するため、まず進捗率28%の原発2基の建設に関する議論が国民代表471人により行われた。建設中止による損害額が2兆6000億ウォンになることが考慮されたのか、建設再開賛成が59.5%、反対が40.5%となり建設再開が決まった。ほぼ完成していた3基と合わせ5基が新設されることになった。
この結果、現在24基、合計設備能力2250万kWの原発は、2022年に27基、2750万kWと最大になる。2030年には18基、2040万kWとなるが、現状からは10%程度減少するに過ぎない。この具体策は2017年末に決定された第8次電力需給計画としてまとめられたが、脱原発に加え脱石炭も骨抜きになっている。
ゼロベースの見直しとされた新設中の石炭火力9基の内7基はそのままの建設が決まり、残り2基はLNG火力に転換されることになった。さらに、既存の石炭火力4基をLNGに転換することになった。この結果、現在61基、3860万kWの設備能力がある石炭火力は、2022年に4200万kW、2030年でも3990万kWと現在よりも設備能力が増強される見込みだ。
最大電力需要量が、2017年の8520万kWから2030年には1億50万kWに伸びることから、原子力、石炭ともに設備量に占めるシェアは減少する。さらに、電力需要量も2017年5060億kWhから2030年、5795億kWhに増加することから、原子力、石炭は発電量においてもシェアを失うが、図-4の通り発電量はそれぞれ10%減少する程度だ。
これで脱原発、脱石炭と呼べるのだろうか。電力需要の増加分は20%の供給を担う計画の再生可能エネルギーに依存することになる。