2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2019年6月1日

茅ヶ崎で実践「ローカルファースト」な考え方とは?

磯山 最後に、茅ケ崎で「ローカルファースト」という活動をされている亀井信幸さんです。

亀井 皆さんと共通するのは、古来あった日本のコミュニティをもう一回取り戻していこうということであり、そして、経済では解決できないことがあると。それに取り組んでいるということなのかなと思います。

亀井氏(写真・生津勝隆)

 「ローカルファースト」とは、日本の国が今抱えている課題を国民・市民一人一人がローカルファーストという価値観を持ち、ライフスタイルを変えていけば、ほとんどの課題は解決できるという魔法の言葉、町を豊かにするための魔法のキーワードだと思っています。

 ローカルファーストなライフスタイルの実践を地元・茅ヶ崎を事例にやっています。それだけではなく全国に広げていきたいし、全国民に対してこのメッセージを送っていきたいと感じてやっております。

 ローカルファーストを理解、面白いなとか、興味を持ってもらう、知ってもらうというためにいろいろなやり方があります。それを具体的に地元で取り組んでいるのが、ローカルファースト研究会が主体になって発行している「ジャーナル」、そしてシンポジウムを年に2回行っています。

 40歳で青年会議所を卒業したときに、急に町の話題をする場がなくなってしまって、それで卒業生が中心になって湘南スタイル研究会という研究会をつくって、それが今のローカルファースト研究会になっています。

 日本の物流というのはすごく発展をしていますけれども、もしかしたら本来なら地元で消費できる分も大きいのではないかと。物が動くということは、ローカルな地域のことを考えていくと、環境問題や交通政策にもつながってきます。欧米の町に行くと、自販機もなかったりしますが、代わりにカフェが至るところにあったりするわけですよね。

 どちらが豊かなのかと。ローカルのことをローカルファーストというキーワードで考えていくと、豊かな社会というのはどういうものであるかが見えてくるわけです。

 「ジャーナル」は食、ストリート、お店などを取り上げています。シンポジウムも含めて、写真撮りから記事、文を書く、取材から、全部手づくりでやっています。作っていく中で多くの市民の皆さんと一緒にローカルファーストを考えていく、ローカルファーストという価値観に対して気付いてもらう、ローカルファーストというライフスタイルのことに気付いてもらう、そんなことを目指しています。

 第4号で、「『ローカルスーパー』が茅ヶ崎を元気にする」という空き店舗事業を紹介しました。茅ヶ崎のローカルスーパーが4つあるんですけれども、彼らは今まで話したこともない競争相手だった。でもローカルファーストというキーワードで集まってもらって、いろいろな新しい気付きがありまして、非常に面白い展開になっております。

 第6号では、「ローカルファーストがつくる『食』のまち」ということで、「早い、安い、便利」に引っ張られすぎた『私たち消費者の価値観』を、ローカルに引き戻す必要があるのではないでしょうか、と問いかけています。どこのまちに行っても金太郎アメみたいに同じ景色、同じモール、同じチェーン店ではつまらない。意識してローカルを選択していきましょう、と。地域の誇りを育てましょう。大好きなまちの景色を守っていくのは、皆さんの心がけ一つですから。

 一人一人が町をつくっていくというその意識を、ライフスタイルを変えていこうという、なかなか難しい運動ではありますが、そこからやっていくことによって、国が、行政が、また企業・団体、皆さん、ここにご参加していただいている皆さん方の活動がより効果的なものにつながっていく、そのベースづくりをやっています。

 財団をつくるときに、ローカルファーストの定義をしなさい、と県のほうから言われましたが、ローカルファーストというのは、幅広い、一つ一つの考え方、価値観があるので、定義をしませんでした。本当に広いので、区切りたくないなということで。それがまた広がり過ぎて難しいというところもあるんですが、そういう考え方です。

磯山 ありがとうございました。いろいろキーワードが出ました。自治をもう一回取り戻すというのがコミュニティ再生のキーワードでありました。それから、自信と誇りという言葉もありましたけれども、自分の地域が大好きだ、あるいは自分の地域を盛り上げようという意欲、意思がもう一回盛り立てられれば、そういう人が出てくれば、地域というのは活性化していくであろうと。

 僕が48回連載をしてきて非常に感じたことは、やはり自立だと思うんですね。地域で自立する。結局お上頼みの自治、あるいは行政に補助金をもらうとか、すべて自分たちのクオリティー・オブ・ライフは国ないし県ないし地域が守ってくれると思ってきたのがこの50年間だったんじゃないかと思うんです。

 これからは自分たちで自立して、自分たちの町の良さを磨いて、自分たちのクオリティー・オブ・ライフを築き上げていくんだということではないかと思います。それは健康もそうでありますし、経済的な自立もそうであるし、ということで、今回いらっしゃっている方も皆さん、行政に頼らないで、自分たちでやっていこうという方たちばかりが集まっているので、非常にアグレッシブで面白い会合になって良かったと思います。

  
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