2024年12月9日(月)

Wedge REPORT

2019年3月9日

 経済ジャーナリスト磯山友幸氏による、月刊Wedge連載「地域再生のキーワード」では丸4年全国48カ所をめぐってきた。このほど、連載のなかで登場していただいた方々を中心に集合していただき、「未来を創る財団」(國松孝次会長)主催で「地域おこし人(じん)サミット」を開催した。今回のテーマは「自然循環のしくみ」。

(paYoshimi/Gettyimages)

イノウエ 「自然循環のしくみ」を担当しますコーディネーターのイノウエでございます。岩手県八幡平で、馬を飼育しながら、その堆肥でマッシュルームを生産している船橋ご夫妻にお話をしていただきたいと思います。

船橋慶延、友紀恵ご夫妻(写真・生津勝隆)

船橋(慶) ジオファーム八幡平は、盛岡市の少し北にあります。企業組合「八幡平地熱活用プロジェクト」で運営しているのがジオファーム八幡平で、この代表をさせていただいております。

 引退馬と人と、新たな仕組みづくりと、産業創出、ということで地域資源でサッシナブルな農場を目指しています。ジオファーム八幡平では、「馬×地熱」ということで、馬糞・堆肥をマッシュルームを栽培に活用するこで、馬の居場所作りをしたいという思いです。

 主軸の商品はマッシュルームと、馬糞・堆肥です。なぜ、私が「八幡平」に行きついたのかと言いますと、子どもの頃から馬が好きで、大学を出た後は、北海道で競走馬の育成をやっていました。そのときに知り合いに八幡平の牧場を紹介してもらい、2012年に妻と娘2人とともに八幡平に移りました。

 震災直後だったこともあって、乗馬イベントなどをしようとしても、自粛せざるを得ない状況が続きました。そうすると、馬がいても仕方がないということになります。北海道からなんとか牧場を手伝いにと思って行ったものの、最初のお手伝いが馬を減らすことになりかねなかったんですね。

 そうではないやり方をなんかないかなっていうところで、地域の農家さんに堆肥を持って行ったんですね。そしたら農家さんはむしろ牧草をくれてですね、本当、あの嘘みたいな本当の話なんですけれども、物々交換ででした。

 「堆肥を持っていきます」「牧草貰います」。これで馬がやっぱり食いつなげたんですね。そして、目の前にサラダファームっていう園芸店があったんです。ちょうど、そこにお客様が来られる、そしたらやっぱり私たちよりも薔薇とか色々園芸に詳しいお客さんもいらして、「いや、馬の堆肥いいんだよね」って「薔薇には特にいいんだよね」って言って、買って下さるようになりました。

 そういうことで、これを商品にすることで換金できてお金をいただけて、馬は食えるし僕らもなんとかやれるし、っていうのが、「あっこれはもしかしたら?」と思った原点だったんです。

 もう1つのテーマとして、マッシュルームを作っています。じゃ、なんでマッシュルームなのか? ということですが、「バフンダケ」というものを、昔の方だと聞かれたことがあるかもしれません。「馬の糞から生えるんだよ!」っておじいちゃんとかたまに言うことがあるんです。でも、決して馬糞から生えるんじゃないんですね。

 元々フランスで、シャンピニオン・ド・パリと呼ばれていて、これがイコールマッシュルームなんです。17世紀くらいにマッシュルームの栽培方法が確立したのがフランスだと言われています。特に、士官学校とか騎兵学校で体系化されたそうです。

 馬の堆肥は、とにかく発酵します。そして、すごく温度が上がります。この発酵熱を使って最初、育苗とか苗とか作っていたところに、なぜかキノコが出てくるっていう話になって、むしろキノコを採ってみようということになった。

 こうして、馬の堆肥を使ってマッシュルームを作るというのがフランスで確立した栽培方法でした。これがフランス全土に、そして全世界に広まって、日本には千葉の習志野に伝わりました。習志野には、騎兵学校、騎兵隊がありました。

 初代から3代目までの旅団隊長が、フランスに留学をされていたそうです。日本の軍馬が大きくなったのもフランスから血を入れたそうです。こうした環境ができたことで、日本のマッシュルームの産地も千葉が発祥になったのです。

 今、なんとか年産80トン目指そうと頑張っています。国産のマッシュルームってだいたい8000トン~9000トン作られているので、なんとか1%みたいなのを目指してやっています。

 そして、ここからが最初のテーマでもあるのですが、引退した馬たちの行き場がやっぱりないよと。よく里親を募集して、面倒をみてもらういうパターンあるんですけど、なかなかこう、60になられた方がそんなあと20年も生きる馬たちをちょっと面倒見ようってなっても、ちょっと大変だってなるんですね。

 そこで私たちが馬を預かって、その馬の堆肥で、野菜を作って、里親さんに返してあげる、というようことができないかと考えています。

イノウエ 私、実はファンドレイジングのコンサルタントとして、全国の地域おこしの資金循環の面からお手伝い面が多いんですね。そのうちの一つで、岡山県の吉備高原に行ってサラブレッドのトレーニングクラブの方と話をしたことがあります。引退馬をどうしたら乗馬にできるかということを慣らしをされたりしてます。


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