2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2019年3月9日

島根県美郷町の「山クジラ」運動

安田 島根県の三郷町という所からやってまいりました安田亮と申します。島根県は全国でいうと人口密度は43番目で、人口は46番目です。その島根県でも西部で1番過疎の進んでいるという場所です。

安田亮さん(右・撮影編集部)

 私が取り組んできたのは獣害という、最近よく聞く話であったりジビエという話もありますけども、私はこれはブームだと思っておりまして、私が1999年に企画課から産業課という部署に移りました。もう20年間近くが異動せずにやっております。ただ鳥獣対策の担当かっていうとそうではありません。

 多くの自治体は、温泉とか山があるとか川があると、PRします。私も企画っていう企画課にいた時はそういう風な感覚でやってました。でも、自然があるのはどこでも一緒です。

 では、具体的にオラが町は何なんだ、ということになります。私は「地域おこし」というのは一つの個性だと思っています。ところが、今の自治体は、隣の町がやってたら、「うちもやれ」となります。国にこんな事業があるから「うちもやれ」ということで、みんな金太郎あめのようなことばっかりが出始めている。

 貧しい市町村や県は、それが欲しいからすぐに公共事業で持って行くと地域っていうのは結局、公共依存型の社会になってしまって、それによって代償は何かっていうと、依存した自律性の生まれないような環境を作っていっています。

 ですから、行政もみんなブームを作ってですね、地域おこしのブームを作っている。今のジビエもそうなんです。ブームなんです。これは国が獣害対策といいながらどんどん獲れと。獲って殺しても、もったいないから、じゃあ食べて減らせと。そういうところから来てるんですね。

 ところが私、凄く違和感があります。それがジビエブームです。ここばっかりが話になってしまっている。だけれども、目を向けないといけないのは猪の衛生面も当然なんですけれども、実際に安定供給とか、商業ベースに乗せるとかではなくて、この地方の暮らしが今どうなってるのかというところが問題だと私はいつも思ってます。

 ですから、獣害をなくせというような話じゃなくて、あくまで限りある資源だという位置付けて考えていかないといけない。

 そもそもジビエで望まれるのは、冬場の猪です。一方で、農作物被害に遭うのは夏場です。ジビエという言葉は獣肉利用ということ、獣肉、野生の鳥獣の肉という意味もありますけれども脂料肉という意味もあります。

 ところが、私が獣害対策でやむを得ず殺さざるを得ない夏場の猪は、脂がないんです。赤身なんです。これ時系列のミスマッチなんですね。つまり、農業の価値と冬場の商業の価値がミスマッチな状況にあるにもかかわらず、ジビエ、ジビエって言ってるんですね。

 私の町では「山クジラ」として、夏場の猪肉を缶詰などに加工したり、皮革製品の生産を行ったりしています。そして、残砂を飼料の原料としています。すべてが循環する仕組みを作っています。

  
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