Wedge REPORT

2019年2月9日

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(AleksOrel/Gettimages)

 経済ジャーナリスト磯山友幸氏による、月刊Wedge連載「地域再生のキーワード」では丸4年全国48カ所をめぐってきた。このほど、連載のなかで登場していただいた方々を中心に集合していただき、「未来を創る財団」(國松孝次会長)主催で「地域おこし人サミット」を開催した。

 今回は東京・丸の内、浅草、日本橋浜町の他、全国各地で「場づくり」を行うgood mornings社代表の水代優氏がコーディネーターとなり、「よいモノを高く売る方法」をキーマンたちに聞いていく。

水代 「よいモノを高く売るしくみ」のコーディネーターを務めさせていただきます水代優と申します。全国で町づくりを中心に、食を中心で町おこしをさせていただいております。まず、自然派きくち村』の取り組みを熊本県菊池市の渡辺義文さんからお話をお聞きしたいと思います。

水代氏(左)、渡辺氏(撮影・編集部)

渡辺 熊本県菊池市から来ました渡辺商店の代表をしています渡辺義文といいます。元々、菊池市の中心地にあります商店街で渡辺商店という酒屋を3代目として、今から20年前に継がせていただきまして、そこから15年くらい前にやっぱり、ちょっと環境問題の話を聞いて、やっぱり経済ってなんだろう?とか今から経済優先でいいんだろうか? とかそういう疑問にあたりまして、次の世代につなぐ商いをやっていきたいということで「自然派きくち村」というネットを作りまして、それを、そこで農産物の販売を始めました。

 どうして農産物をちゃんとした価格帯で販売しないといけないかといいますと、農林水産省が出しているデータなんですけど、農家人口が平成29年度で180万人台、ここ数年10万人ずつ農家が減っています。10年後くらいには80万人とか70万人、そこまで激減するんじゃないかなっていう予測があります。

 そのうち、今の農家の平均年齢なんですけど、平均年齢が66.7歳、若手って呼ばれている39歳以下は、全体の6%です。これで本当に日本の農業って大丈夫なんだろうか。本当に日本の食料とかそういったものを大丈夫なんだろうかということを皆さんに考えてもらいたいなと思います。

 農家の所得はこの30年くらい全く上がってないんですよ。物産館、道の駅とかで野菜などが売られていますけど、もう30年くらい前から1つで100円とか、150円とかなんですよ。全然上がってない。でも、機械などの物価は、どんどん上がっています。

 そういう中で、若い後継者が育つかっていうと、育たないと思います。こういう社会の流れをどうかしないとけない。どっかで止めて、農家の所得を上げていかないと、日本の農家、小さな農家は続いていけない。

 もし、10年後本当に80万人とかそういう農家人口になった場合、どういうふうになるかって想像してみると、大型農業で機械的な農家、もう大きなところしか残らない。田舎の中山間地の小さな畑とか、そういったところはもう必然的に耕作放棄地になっていく。やはり、そうじゃない社会を僕らはもう1回作り直さないといけないんじゃないかなって思って活動をやっています。

 農家の後継者を育てたいという思いで「きくち村」は生産者の言い値で全て買い取ります。そして、どうやって販売していくかっていうと「付加価値」を生み出すために、無農薬とか自然栽培で農家に作ってもらいます。

 近江商人の「三方良し」と、唱えてますけど、僕は「四方良し」じゃないかなという思いです。「買い手良し」「売りて良し」「世間が良く」なって、やっぱり最終的に「未来が良く」ならないという思いで、商いをやっています。

 「きくち村」の商品づくりですが、最初は菊池に無農薬のお米生産者多いので、そのお米を販売しようと思って販売したんですけど、酒屋でお米を販売しても全然売れません。なぜ売れないのかということを考えた時に、お米のことを全く知らないっていうことに気づきまして、それじゃあ自分でお米を作ってみようということで、無農薬のお米を作りました。

 親からは「何が商人がお米を作るのか?」とかそういうこと言われたんですけれど、やはりこう人に伝えるためにはやっぱり無農薬で本当に出来るのかというのを自分で体験したかったので、そこはもう押し通して実際作りました。毎日、地元の農家さんのところに行って、作り方を習って、そして無事、お米を17俵ですかね、2反半で結構な量が採れてですね。

 それじゃ、どういうふうな、そこからまた、どういう味なんだろうということで、隣町で九州米サミットっていうのがあってましたんで、そこで食味に品評会に出したら無農薬部門で1年目で最優秀賞を頂いてこれは何が凄かったかというと、やっぱり地元の農家の方に、ずっとこういう肥料を入れて、こういう作業をして全部聞いて、その通りに作らせて貰ったんですけど、それで賞が獲れるっていうことは、やっぱりそれまで培った技術とか、やっぱりそういうものが凄いんだということが分かりました。

 そして、そのお米をどうしようって考えた時に、お米の販売とか全然出来てなかったので、それじゃ僕は酒屋なので、これで焼酎を作ろうという思いになりました。熊本には球磨焼酎っていう凄い米焼酎があります。それを蔵元に持って行き、それで自分で作ったお米を室蓋(むろぶた)で全部丁寧に麹をつけてもらって、1次、2次も全部瓶で仕込んでいって、というような形で焼酎にして、無事に焼酎がこう出来て、それをまた私が買い取って販売をするというものです。

 今まで流通って、ただ物をメーカーから仕入れてとか、問屋さんから仕入れて販売っていう方法しかやってなかったんですけど、今回は自分で米を作って、それを蔵元に持って行って、そしてそれをまた買い上げて販売する。

 すごい楽しかったんですね。これが商売なんだっていうことに気づきました。それじゃ、こういうものを将来、3つ、3アイテム、1年間3アイテム作っていったら10年間で30アイテムになると。そしたら、商売になるなって思ったんです。

 そういうものをやっていく。そうすることによって、商品にストーリーが現れてくるんですね。ただの商品じゃない、これにはやっぱり僕たちの思いが入っているんだっていうことで、そういうものを作っていきたい。生産者とともにやっていきたいということでやっています。

 そうすることによって、消費者に普通の商品とは違う、同じ米焼酎でもこれはこうやった思いがあった商品なんだっていうことで、取り組んでます。

 今ではだいたい、「自然派きくち村」っていうネットショップで500アイテム以上ですかね、誰々さんのお米で作ったせんべいですとか、日本酒もこのメンバーで作った自然栽培っていって有機肥料も使わない米で、蔵元に持って行って日本酒を作ってもらう。

 これは、普通のメーカーが出している商品じゃなく、僕らが農家と手を一緒にやることによって出来上がっていく商品なんです。そういうものが、こう付加価値を高めていく。だから、そして、どこで販売してもらうかというと、その価値が分かってくれる人達が全国にいます。

 なかなか、地元でその価値が分かってくれる人ってあんまりいないんですけど、ネットを使うことで全国に広まっていって、今では会員が2万5000人くらいですかね。メールマガジン会員も6000人くらいまで成長していって、何がすごいかっていったら、やっぱり消費者さんたちのリピーター率です。だいたい1日の注文の8割くらいはリピーターの方が常に買ってくれるっていう仕組みになってきたので、やっぱりそういうふうな形で、要するに、売り手良し買い手良し世間良し未来良し、そういう社会を作っていく事がやっぱりこれからの世の中で大切になってくることじゃないかなと思っています。

渡辺氏

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