本物のアレ研究所
そうすることによって、「本物のアレ研究所」っていう加工場を作っています。そこで作るモノは、原価計算をしません。すべて生産者から言い値で買って、それを化学調味料とか使わず、調味料から醤油も、小豆島の木桶で作っている正金醤油さんっていうところに大豆と小麦とか、そういった原料をもっていって醤油を仕込むんです。
それも、本当の醤油って2年間寝かせないとできないんで、その手間暇をかけて調味料から作っていって、そういうふうな形でどこもしないような、できないようなものを作ることによって、そこの地域性というのはもっと付加価値が高めていけるんじゃないかなと思ってやっています。そうすることによって、生産者も潤う、僕らも絶対加工場をつくっていくことで潤っていくし消費者に喜んでもらう。
やっぱりそういう社会が出来上がっていかないとおかしくなっていくんじゃないかなと思います。原価計算をしていくと、消費者側から全部値段が決まっていきます。それじゃ、この豆腐一丁30円で作らないといけないということで、原価は、農家の手取りはいくらになるのかとか、こうして値段が決まっていっているのが今の社会です。
うちの流れは生産者がいくら、流通が、加工料がいくらで流通がいくらで消費者、っていうような形で、元々そういうふうな流れだったんですけれども、いつのまにか反対に流れているっていう、そういうことにおかしい、疑問をもってちゃんとした流れを作っていかないといけないと思って、「本物のアレ研究所」っていう加工場を作りました。
水代 ありがとうございます。全国各地で私も商品の企画ですとかプロデュースですとかさせていただいて、全国でも本当にストーリー大事だよね、と。ただ、そのストーリーの編集の仕方とか物語のお客様への伝え方とか、そこにカギがあるんじゃないかなと思っています。
渡辺 商品を作るうえで、1番大切なのは畑から始まるということなんじゃないかなと思っています。畑から始まるということは、そこを耕してくれる生産者、育ててくれる生産者がまずいます。どういう農法でどういう肥料を使ってとか、ここがこだわりなんだ、そういうところから始まっていく。もっと、生産者の人臭さ、なんかそういうものが売っていきたいなと思います。
一つの焼酎ができるまでにも、色んな人たちが携わって商品が出来上がっています。それじゃ包装はどうしよう。瓶であると普通一般的に、ワンエー瓶っていって、ただもう入れて使った後は捨てられるっていう瓶じゃなく、もう1回リユース出来る瓶を使ったらどうか?とか。もう一回洗って環境に良いような売り方って出来ないだろうか。折角環境に良い農法でやってて、環境に良い販売の仕方をやってるんだったら、そういうところまで演出するっていうのも大事なことなんじゃないかな。
農業大国「菊池市」
水代 江頭実市長いかがでしょうか?
江頭 菊池市の江頭といいます。彼が酒屋さんの3代目って言ったでしょ。私の実家も酒屋だったんです実は。私は継がなかったんで親父の代でやめた酒屋さんで、こっち(渡辺氏)が3代目、成功した酒屋さんですね。
菊池は農業大国です。生産高でいうと日本の約1700ある自治体においても売り上げで13番目、畜産でいくと4番目です。ところが世の中と上手くつながってないので、いわば1次産品をそのまま横に流している一番付加価値の低い売り方なんですよね。
私は生産戦略のことはよく分からないんで、では、販売戦略でいこうと。まず考えたのは「菊池基準」というもの。これは世の中がすべからく健康志向ですのでここに合ったものを作っていけば、言葉を換えれば量じゃなくて質の戦略でいけばたぶんそれが差別化に繋がっていくんじゃないかなと思いまして、安全・安心ということから健康につながる食。これにこだわったんですね。
菊池市では環境保全型の農業をやってらっしゃる方が比較的集積度があったんですよ。ですから、そこで農薬の使い方、化学肥料の使い方を7段階に見やすく「見える化」しました。それを菊池基準ということで市で統一して、そういう農業者の方をどんどん促進していったんですね。
その次に、そこから出てくるものを今度は売れないとまた長続きしませんので、その売るお手伝いは併せて私たちがやりましょうということで、菊池基準とセットで(菊池)市でネットショップを作ったんですよ。たぶん、行政が独自でネットショップを持ってるところはあまりないと思います。
その菊池基準でネットショップというツールに繋がっていけば、東京の人も北海道の人も菊池と繋がれるわけですよね。ただ、菊池市と言われてもどこにあるのかさえ分からないわけですよ。またさらに、有機、有機と言いながら「なんちゃって有機」みたいなものが世にあふれてるわけですよね。
そこに菊池市が認証したそういう仕組みがあって、そこに認証番号がちゃんとついている。いわば菊池市のお墨付きでがついているので、安全・安心感が違う訳です。これまでのところ、そういう仕組みが比較的上手くつながり始めてましてね。ちょうど地方創生のふるさと納税の波にちょうど上手くつながったものですから、今のところ目標を上回る感じで進んできているんですね。
地元でお金を還流させる
西村 城崎温泉というところで旅館をやってます西村総一郎と申します。私7代目でございまして、今旅館の全国の青年部長をやっております。
我々の町は、コウノトリっていうのをシンボルをいただきまして、1度絶滅したコウノトリを野生に復帰させる。コウノトリも住める環境で作られたお米っていうものに付加価値をつけて高く売ってます。
減農薬から無農薬、それで生産者の方もそれでご飯が食べていけるので、どんどんそういった減農薬・無農薬の面積を増やしていきましょう、っていうような流れで農業をやっています。
豊岡市がコウノトリをシンボルとして、経済を所管するところも環境経済学部、環境経済部っていう名前ですよね、環境と経済を共鳴をさせようというのが今の流れです。
観光と農業の切り口でいうと、やはり地元で作られたものをちゃんと地元で使うかどうかっていうのは結構大事なことだと思います。
これが豊岡でいうと宿泊飲食業が一番儲けてます。362億円の売り上げがあるんですが、そのうち235億円お金が残ります。商業になると331億円売り上げがあるんですが、マイナス135億円、コンビニでもの買って、アマゾンでもの買ったり、Edionで電化製品を買っても人件費ぐらいは戻りますけどほとんどお金は残らない。
ですので、いかにこのあたりをうまく我々の観光業と一次産業をつなげて地元で消費をさせるのかっていうのが、ひとつの地域を守るっていうことの意味でいえばかなり大事になるんじゃないのかなと思ってます。
外国人のお客さんにきくと、やはり地元の物を使ってるっていうものを望んでます。 地元の物を使っていてこういうストーリーなんだよって伝われば、それだったら5000円じゃなくて8000円でいいっていうような、そういう反応は如実に返ってきてます。
今のことを考えるんじゃなくて、それをちゃんと伝える能力がないと、たぶん買っていただけないのかなと。
水代 渡辺さん、最後に一言お願いします。
渡辺 はい。やはり、モノを高く売るというか、日本の農産物って安すぎると思うんですよ。もう日本全体経済的になんかこう、もう全部安く、ずっと上がってきてないような社会じゃないかな。だから人件費とかそういったのもあがってないし、消費者は安いものを買って喜んでるけれど、それが自分に帰ってきている。
だから農産物が高くなることによって経済って絶対上がっていくんだって、だからそれが投資なんだっていう意識を変えてもらうことをなんかこう僕らは発信していきたいなと思ってます。
水代 ありがとうございます。良いものを高くる前に目の前のお客さんがちゃんと見えてるのかっていう、その欲しいものがあるから、そこはやっぱ来てくれるし買ってくれるし遊びに来てくれるわけで、やっぱりそのちゃんとお客様が見えてるかっていう事は凄く良いものを高く売る前に凄く大事なんだなぁって事を今日、皆さんのお話で教えていただきました。ありがとうございます。
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