2024年4月17日(水)

海外を見て、本当の日本を知ろう 

2019年3月27日

シンガポール人運転手が語る日本人特有のパラドックス

 「最近子供が生まれたって? それはおめでとう。わしにはもう孫が5人もいるよ」「週末は娘の住むマレーシアに遊びにいく。現地の大学教授に嫁いだんだ」「老後の趣味みたいな感じでタクシー転がしてるだけだから、クレジットカード決済端末いれたりしないんだよ。毎日夕方には孫と遊んで、気楽なもんだ」フレンドリーなこの運転手のご老人は、やや一方的なのだがどんどん私に話しかけてくれる。ただ、英語はアメリカに10年住み、その後も外資系企業でずっと勤めてきた私にも聞き取りづらい。

 巷では「Singlish」と呼ばれている。英語、広東語、タミル語、マレー語その他移民の言語が混在したシンガポール独自の派生型英語で、アクセントが強い。しかもよくよく聞いてみると、シンガポール生まれのこのご老人のSinglishは、英文法もちょっぴり微妙だったりする。ともすれば英語科目の得意な日本人高校生や大学生のほうが「模範的文章」をよく知っているのではあるまいか。

 と同時に、このタクシー運転手含め世界でよく言われるのは、「日本人はあれほど教育レベルが高いのに英会話には弱いから不思議だ」、と評価されている点だ。英語という会話「手段」に関する知識は豊富でも、会話「力」は乏しいというパラドックスが、日本人にはある。

 このパラドックスに関し私が外国人に訊ねられた際、よく使う模範解答がある。「日本人独特の気質で、不完全な文章を話して「恥」をかきたくないし、そもそも誤解を与えるくらいなら自己主張せず引き下がる「かしこの精神」という美徳なんですよ」、というのだ。ただ、国際社会の舞台で過度に黙りすぎて、周囲に誤解されたり不本意な方向に話をどんどん進められたりするのも、損した気分がしないでもない。


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