ドイツ連邦議会は昨年12月14日、男性でも女性でもない第三の性とされる「インターセックス(性分化疾患)」を認める改正案を可決した。対象者は、出生届に「多様」を意味する「ディバース」が書き込まれ、欧州で初めて公式認定されることになる。
性分化疾患とは、遺伝子的にも解剖学的にも、性が男性でも女性でもない状態のこと。例えば、外見が女性でも、子宮や卵巣がなく、精巣を持ち、多くが女性として一般認識されていく。
ドイツ政府は13年、この性別問題の取り組みを開始し、対象となる新生児の出生届で、性別欄の無記入を許可。左右連立のメルケル政権は、17年に改正案に着手した。今回の改正案通過で、当事者は出生届、パスポート、運転免許証など、行政文書に「ディバース」と記載することが可能になる。
しかし、対象者が性分化疾患かどうかを判断するには、医師の診断が必要とされ、これを不服とする声もある。「レズビアン・ゲイ連盟」(LSVD)のヘニー・エンゲルス代表は、法改正に対し「政府が社会・心理的観点からでなく、身体的特徴のみで性を判断している」と批判した。
その一方で、極右党「ドイツのための選択肢」(AfD)のベアトリクス・フォン・シュトルヒ副党首は、「年齢や体の大きさのように、性別は人間が生まれた時から決まった事実」と述べ、第三の性そのものを否定した。
国連の調べによると、性分化疾患者は、世界に0・05~1・7%の割合で存在し、赤毛人口とほぼ同数だという。
ベルギー出身のトップモデル、ハンネ・ギャビー・オディール氏(30歳)は17年、ファッション誌『ボーグ』に対し、自身が性分化疾患者であることを告白した。
10歳で精巣を除去し、18歳で女性器手術を受けたオディール氏は「生理の会話や子供を持つこともできないが、かといって男性でもない。でも、インターセックスの自分を誇りに思う」と語っている。
世界では、オーストラリアやニュージランドをはじめ、アメリカ(州による)、カナダ、ネパール、パキスタンなどでも、行政文書における第三の性を認めている。今後、さらに認定は進むだろう。
しかし難題は、言語学における「ディバース」対象者の扱いのようだ。英語の「He」や「She」のように、男性と女性を明確に使い分ける言語は、性分化疾患者をどう名付けるのか。「Ze」と呼ぶ動きもあるようだが、言葉よりも人間の脳が混乱し、むしろ社会に差別が広がってしまうのではないだろうか。
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